電氣人間の虞 


 2025.12.18      都市伝説とミステリーの融合 【電氣人間の虞】


                     
電氣人間の虞 (光文社文庫) [ 詠坂雄二 ]
評価:3

■ヒトコト感想
電気人間という怪異について描かれている。序盤では複数の人物の視点となり、謎の電気人間の怪異を調べているうちに死亡してしまう。この時点では電気人間が何者かはまったくわからない。それでいて、怪しげな死がつきまとう。そこには何か大きな仕掛けがあり、現実的な殺人を電気人間という怪異で目くらましをしているのかと思ったのだが…。

かなり後半のラストまで電気人間を引っ張っている。作中では作者の分身のようなライターも登場していくる。皮肉的にこの電気人間の内容を小説化するなんて言葉も登場してくる。電気人間という言葉の響きだけを聞くと、電気を体にまとった人物で、対象者を電気で殺すというようなイメージをもってしまった。

■ストーリー
「電気人間って知ってる?」一部の地域で根強く語られている奇怪な都市伝説。真相に近付く者は次々に死んでいく。語ると現れ、人の思考を読むという電気人間は存在する!? ライターの柵馬朋康(さくまともやす)もまた謎の解明に乗り出すが、複数の仮説を拒絶する怪異は、彼を出口の見えない困惑の迷宮に誘(いざな)う――。ミステリか、ホラーか。ジャンルの枠を軽妙に超越する鮮烈の問題作!

■感想
都市伝説が実際の殺人に結び付く。「リング」に近いのかもしれない。最初は電気人間を卒論のテーマとして書こうとした女子大生が、不思議な死に方をした。ただの心不全として処理されたのだが…。そこから女子大生の親戚である高校生が、電気人間の秘密を暴こうとする。

そこから都市伝説を調査している小学生との交流があり、最終的には高校生も死んでしまう。ライターや作者の分身と思われる人物が不審な死をとげた者たちを調査するのだが…。電気人間が人を殺したという流れが出来上がっている。

電気での感電死の場合はどのような死体になるのか。そして、謎の洞窟が登場したりと不思議な展開となる。呪いだとか電気人間という怪異だとか。そのあたりの流れが描かれてはいるのだが…。最終的なオチは微妙なのかもしれない。

リングのように呪いで最後までひっぱり、その整合性がとれていればよいのだが、そうなるわけではない。電気人間は存在するのだが、都市伝説が途絶えないように、ひたすら都市伝説を後世へとつなげる者だけが生き残ることができるようだ。

怪異のオチを描かずに、なんとなくそのまま終わっている。そのため、現実的な仕掛けがあり、女子大生や高校生が死んだのか、それとも電気人間によって殺されたのかあいまいなまま終わっている。電気人間の正体も不明なまま、都市伝説の起源についても説明されていない。

何かしらそのあたりのオチを期待していただけに残念だ。ミステリーなのかホラーなのか。作者が登場し、そのまま小説家としてテーマを探しながらライターのお手伝いをしている。

電気人間という名前だけは非常に興味深い。



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