ブーズたち鳥たちわたしたち [ 江國香織 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「ブーズたち」「鳥たち」「わたしたち」の3篇で構成されている本作。それぞれ独立した物語ではあるが、うっすらとした関連性がある。強烈なインパクトはないのだが、どこか不思議な物語でおとぎ話のような雰囲気すらある。「ブーズ」の描写は詳しく描かれてはいないが、河童に似た異形の存在らしい。「鳥たち」では、鳥が勝手に自分の周りに集まってくる不思議な存在の冬子が登場し、天狗の気配が登場したりもする。
河童、天狗と続いてくるので最後の「わたしたち」ではどんな異形の存在が登場してくるのかと思いきや…。ドロドロとした不倫の雰囲気あり、幻想的な雰囲気ありと、それまでの物語の総決算のような雰囲気すらある。不思議な中編集だ。
■ストーリー
世界が変わるわたしたちも生き直す。極上のクラムチャウダーを求めてロードアイランドを訪ねた恵理加、初めて両親の元を離れてキャンプに参加した誠也……自由で、幸福で、生命の輝き(エネルギー)に満ちた、著者の新境地 珠玉の連作中篇。角川春樹事務所創立30周年記念作品極上のクラムチャウダーをたべるためにロードアイランド州を訪れた恵理加。レストランですばらしい食事とワインを堪能した彼女だったが、それ以上に興味を惹かれたのが、ルークという不思議なウェイターで……
「ブーズたち」ある日、秋介や真昼は、スマートフォンの電源を切っているのに着信音が聞えたり、深夜眠っている寝室で、イスラムの祈りの声が聞えてきたり――「ここにないはずの音」が自分にだけに聞こえるようになっていた。「鳥たち」心療内科医のさやかは、最近幻聴が聞こえる患者が増えていることが気になっていた。が、それよりも彼女には、差し迫った問題があった。そろそろ妻子持ちの恋人と別れようとしていたタイミングで妊娠が発覚したのだ……「わたしたち」
■感想
「ブーズたち」は主人公の恵理加の物語だ。旅行先で特別なクラムチャウダーを飲むために入った店で、異形の人物と出会う。それがブーズだった。ルークという名前で呼ばれる存在であるのだが、普通ではない。
地球外生命体との出会いであれば、排除しようとしたり、そこでの異質感を描いたりするのだが、本作はそうではない。ルークはブーズであることは秘密ではあるが、脅威ではない。人間とは決定的に違うのだが、そこを理解しつつも、恵理加は差別することがなく、ルークもそのことを気にしない。この自然体が少し不思議だ。
「鳥たち」は複数の人物の視点で物語は進んでいく。周りに自然と鳥が集まってくる冬子。そしてどの視点からでも鳥がカギを握ることになる。不倫をしていたり、家族関係が崩壊していたり。妻の不倫を認めるが決して離婚しない男が登場したり。
作中の人物たちはどこか壊れているような感じだ。倫理観であり、普通ではない感情が渦巻いている。それが鳥や天狗とどのような関係があるのか。何かを暗喩しているようでありながらはっきりしない。
ラストの「わたしたち」は、診療内科医のさやかが主人公となる。物語は複数の視点での物語となっている。望まぬ妊娠、あいまいな関係の恋人、幻聴を聞くことになる患者。何かをはっきりと修正したり、解決するような物語ではない。
ぼんやりとしたまま、ラストをあいまいに描いている。望まない妊娠の末にどうなったのかを、はっきりと結末として描くことはない。後味がすっきりとしない代わりに、何かを結論づけることは必ずじも必要ではないと思わせる力がある。
人によってはぼんやりとした結末と感じることがあるだろう。