あんのこと


 2025.3.12    薬物中毒者は自殺しない【あんのこと】


                     
あんのこと [ 河合優実 ]
評価:3

■ヒトコト感想
実話をもとにした衝撃的な作品。主人公の杏は幼少期から母親に虐待され、12歳で売春させられる。その後、母親に売春を強要され薬物中毒となる。まずここまでの杏の人生だけでも強烈すぎるのだが、ここからさらに杏の強烈な人生が続いていく。薬物から更生するための自助施設に入り介護福祉士として働きながら、母親とも離れて自立しようとするのだが…。

コロナによりすべてが終わってしまう。施設が閉鎖され学校も仕事も閉鎖されると、未来に希望がもてなくなったのか。作中で刑事がつぶやいた言葉が印象的だ。「薬物中毒者は自殺しない。死ぬよりも薬をやりたいからだ」。杏が自殺したのはなぜなのか、それは人によって様々な解釈があるような気がした。

■ストーリー
21歳の主人公・杏は、幼い頃から母親に暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅という変わった刑事と出会う。大人を信用したことのない杏だが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。

週刊誌記者の桐野は、「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていた。ちょうどその頃、新型コロナウイルスが出現。杏がやっと手にした居場所や人とのつながりは、あっという間に失われてしまう。行く手を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたシェルターの隣人から思いがけない頼みごとをされる──。

■感想
薬物中毒の杏。冒頭から売春と薬物でボロボロになった若い女が家に帰ると、母親と祖母が暮らすゴミ貯めのようなアパートに帰ってくる。ここで母親が杏のことをママと呼ぶのが究極に違和感があった。杏の売春で稼いだ金によって生活が成り立っていたからだろう。

そんな杏を助けたのは刑事の多田羅なのだが…。薬物更生施設を紹介したりと何かと面倒見が良い多田羅。杏は全面的に多田羅を信頼していたのだが…。多田羅は薬物中毒の女に言い寄って性行為をしたということで逮捕されてしまう。

物語の中盤までは、杏は多田羅という信頼できる人物に出合ったことで前向きに更生できる流れができていた。介護福祉士としても仕事をまじめにし、女性のシェルターで生活し母親からも自立することに成功した。すべては多田羅のお陰のように見えていたのだが…。

多田羅は杏に手をだしたりはしていない。ただ、多田羅が逮捕されたというのを知った杏は強烈な衝撃を受けたことだろう。その後、最終的には自殺する杏ではあるが、多田羅が逮捕されていなかったら杏は自殺していなかったような気がした。

コロナ渦となり、更生施設は閉鎖され、再入学した中学も学級閉鎖となる。そして仕事場である介護施設も閉鎖されるとなると…。作中ではそのほか様々な状況が杏を追い詰めている。特に無理やり預けられた子供の面倒を必死にみていたのが、母親に子供を取り上げられたのが一番大きいのだろう。

薬物中毒者は自殺しないという多田羅の言葉にあるように、杏は何かに絶望して自殺したということだ。本作が実話を元にしていることに衝撃を受けた。

杏の母親のクズっぷりはすさまじいインパクトがある。



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