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 2025.12.8      サーバーの中にたまり続けた悪意 【アクセス】


                     
アクセス (中公文庫 ほ17-13) [ 誉田哲也 ]
評価:3

■ヒトコト感想
どのような物語かを全く事前情報なしに読み進めた。携帯電話から聞こえてくる恐怖の声。強烈なのは白い特攻服を着て殺人を繰り返す学生の存在だ。この世のものではない存在をプロバイダーのサーバ内に存在する悪意として説明している。どのような経緯でそんな恐ろしいサーバが出来上がったのか。最初に携帯電話料金が無料になるという情報を得た丸山はどこの誰から手に入れたのか。

HPがどこかにリンクされていないため、直接URLを打ち込むことがサイトに入り込む方法ではあるのだが…。都市伝説的な香りも強い。インターネットの黎明期では、この手の恐ろしいサイトの噂があちこちにあったのだが、それを物語化したのが本作になるのだろう。

■ストーリー
親友の自殺は自分のせい。悲しみに暮れる可奈子の携帯が着信した。悪意に満ちた声が言う、「お前が殺したんだよ」と――。すべての始まりは、誰かを勧誘すれば無料となるプロバイダ「2mb.net」。登録した高校生たちに襲いかかる殺人の連鎖。仮想現実を支配する「極限の悪意」を相手に、生き残りを賭けた壮絶な戦いが始まった!

■感想
親友の尚美が自殺した。可奈子と尚美は同じ丸山という男子に恋をしており、その恋愛感情のもつれで親友が自殺したのかと思われたのだが…。携帯電話料金が無料になるという甘い罠に誘われて悪意のある存在に襲われる者たち。

呪われるパターンではあるのだが、その呪われ方がHPにアクセスし携帯電話料金を無料化するサイトで申し込むこと。そして、悪霊の存在はサーバの中にいるというのが当時は新しいのだろう。昔からあるホラーの定番を現代的な装置に置き換えているということだ。

人の悪意や願望がたまったサーバの中では、悪霊がうごめいている。本作で恐ろしいのは、悪霊のバックグラウンドは不明で、そのあたりを深堀していない部分だ。何かわからない一般的な悪意が意志をもち、実体をもちたいからと現実の人間に死の恐怖を味合わせて魂を入れ替えてしまう。

実体を得た悪霊は何をするではなく、恐らくだが本体が奥底に隠していた願望を表に出すということなのだろう。可奈子がひたすら過食に走り、近所の犬を虐殺するのは可奈子の悪意が増幅された結果なのだろう。

サーバ内部の世界は、まさにゲームのようだ。頭の中に思い浮かべたことが現実となる。腹を裂かれたとしても、気のせいだと思い込めば治ってしまう。青龍刀を手にしていると思えば、手には巨大な青龍刀がある。そんななんでもありな状態で、サーバ内に閉じ込められた可奈子と尚美は悪霊たちと戦う。

この部分だけはやけにファンタジー感が強い。現実世界での強烈な騒動の後始末がどうなっただとか、虐殺を続けてきた悪霊に乗っ取られた白い特攻服の男はどうなったのだろうか。

当時では、新しさを感じるホラーだったのだろう。



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