網走発遥かなり 


 2026.6.8      繋がりがあるようでない、微妙なミステリーだ 【網走発遥かなり】


                     
網走発遙かなり 改訂完全版 (講談社文庫) [ 島田荘司 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
過去の島田荘司の短編にプラスαした形の本作。連作短編集となってはいるが、その繋がりをどこまで意識して読むことができるのか。。「丘の上」「化石の街」「乱歩の幻影」「終章・網走発遥かなり」の4つの短編が収録されている。各短編はそれぞれ独立した物語となっているように思えるが、別の章でも同じ名前の人物が登場したりもする。

そのため、何か関係がありそうな雰囲気があるのだが…。最終章でそれらすべての繋がりが明らかとなるのだが…。大きな仕掛けというのは感じることはない。ミステリアスな雰囲気はあり、一昔前の金田一シリーズのような妖艶なミステリーというイメージだ。走る列車の中で人が消えたり現れたりするのはその典型かもしれない。

■ストーリー
東京郊外の高級住宅が並ぶ丘の上を毎日観察する老人の狙いは何か?また都心のデパートや地下街に出没するピエロの正体は?そして江戸川乱歩の古い写真を持つ老女の素顔とは?現代の東京に表出した奇妙な出来事はやがて40年前の雪の北海道で起きた惨事のナゾ解きに結集する。周到な野心作。

■感想
「丘の上」は単純なミステリーとしての奇妙さがある。謎の行動をとる笠井という老人。丘の上の高級住宅街をうらやむ主婦。笠井の行動から営利誘拐までも思いついてしまう主婦の壊れっぷりがすさまじい。

その営利誘拐は笠井の機転により止められることになる。笠井が異常者で、子供をホルマリン漬けにしようとしていると思い込む主婦。ここでの笠井と別の章で登場する笠井が同一人物である必然性をあまり感じない。裕福な家庭ということで里見が登場するのだが、別の章でも里見が登場するが、それはただ単に同じ人物だということ以外はない。

「化石の街」は、新宿駅の地下街に現れる小汚いピエロとそれを見る里見の物語だ。意味ありげに新宿駅近辺を移動するピエロ。同じルートをたどる老紳士が登場するのだが、これが笠井だ。前章で関連のある笠井と里見が別の形でつながることになる。

前の章での営利誘拐騒ぎの繋がりが、この章でのなぞの主婦の行動につながる。繋がりがあるようで、単純に登場人物の名前をそろえただけのようにも思えてしまう。先の先まで考えつくした上での名前付けではないような気がした。

終章で、すべての繋がりが明らかになるはずなのだが…。これこそ一昔前のミステリーの典型かもしれない。戦中の北海道で起きた事件の真相を回想する形の物語だ。雪深い北海道での列車内での事件。狙撃されたはずの人物が生きていたり、列車内に放置されていた死体が急に消え、別のタイミングでは女性のとなりに座っていたり。

主人公が情報収集するレベルでは不自然な展開が目白押しだが、真実を知る者が種明かしをする。金田一シリーズのような展開だ。

かなり特殊な短編集であることは間違いない。



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