夕暮れをすぎて 


 2022.5.24      じわじわと伝わってくる恐怖感 【夕暮れをすぎて】

                     
夕暮れをすぎて[ スティーヴン・キング ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
スティーヴン・キングの短編集。印象的なのは恐ろしい展開となる「ジンジャーブレッドガール」だ。赤ちゃんを亡くした妻が、ひたすら外を走り続ける。頭の中に常にこびりついているモヤモヤを振り払うために走るのはなんとなくわかる。夫と不仲になったとしても走るのを辞めない。何か衝撃的な経験をした人が、思いもよらない行動にでるのはなんとなく理解できる。

ひたすら異常者的に走る物語として終わるかと思いきや…。後半から一気に流れが変わってくる。まさか異常者に監禁され殺される危機に直面するとは思わなかった。そこから妻が逃げ出すために、実は今まで走ってきたことが役に立ったという流れなのだろう。流れの急変には驚かずにはいられない。

■ストーリー
愛娘を亡くした痛手を癒すべく島に移り住んだ女性を見舞った想像も絶する危機とは?平凡な女性の勇気と再生を圧倒的な緊迫感で描き出す「ジンジャーブレッド・ガール」、静かな鎮魂の祈りが胸を打つ「彼らが残したもの」など、切ない悲しみから不思議の物語まで、天才作家キングの多彩な手腕を大いに見せつける傑作短篇集。

■感想
「エアロバイク」は、中年の男が健康診断で医者に痩せるように言われたことからスタートする。体の中に工事作業員がおり、上から次々と落ちてくる脂肪や栄養素をしっかりと作業員が処理することで、体に適正に栄養として分配されている。

今は作業員がしっかりと働いているから正常に体を整えられているが、もし、作業員の生産性が落ちた場合は…。歳とともに代謝が落ちていくことを表現しているのだろうが…。エアロバイクを購入し現実世界と想像の世界が混沌となるのが良い。

「卒業の午後」などは、かなり短いのだがアメリカらしい卒業式でのパーティを連想する流れとなるのが良い。ただ、お決まり通りそれだけでは終わらずに、何か終末的なものを連想させる流れとなる。なんてことない普通の卒業式後の午後。

その後のパーティや誰と誰が付き合うだとか、将来までも空想しながら、彼氏の家族との関係なども描かれている。そこに突如として核戦争のようなきのこ雲が浮かび上がる。何かが起きているのだが、その後の展開は描かれない。ただ、パーティは中止になるだろうという想像が、その後の展開を物語っている。

「パーキングエリア」は、もしかしたら作者の実体験も含まれているのかもしれない。日本のパーキングエリアとはちょっと違った雰囲気の中で繰り広げられる物語。他の短編と同様にごく普通の日常と思いきや、実は恐ろしい展開がまっている。

「ジンジャーブレッドガール」でも感じたことがだが、シンプルな物語の方が心に残る。「ヴィラ」は、あまりに舞台設定が複雑すぎてよくわからないまま物語が終わったというような感じだ。

じわじわとした恐怖感があるのは確かだ。



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