私は存在が空気 


 2024.8.25      目立たない超能力少年少女たちが活躍 【私は存在が空気】


                     
私は存在が空気 [ 中田永一 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
どこか学校内部では目立たない立場にいる少年少女たちが特殊能力を使って活動する物語だ。印象的なのは「少年ジャンパー」だ。ひきこもりの主人公はいつの間にか過去に行った場所にジャンプできる能力を得る。ひきこもりというのがポイントだ。学校のマドンナと知り合いとなり、マドンナの遠距離恋愛の彼氏に会うためマドンナを連れてジャンプする。

ひきこもりの主人公がジャンプを通してだんだんとたくましくなっていくのが良い。引きこもりなので、部屋から出てこなくても誰も不思議に思わない。実は少年は部屋から海外へとジャンプしていた。ちょっとした恋愛要素もあり、ほろ苦い展開ではあるが、主人公がひきこもりを克服し前向きになるのが良い。

■ストーリー
ある理由から存在感を消せるようになった高校生、鈴木伊織。彼女を認識できるのは、友人の春日部さやかだけ。けれど、さやかと話すうちに、伊織はバスケ部で人気の上条先輩のことが気になりだした。ついにはその〝体質〟を活かし、彼の後をつけ始め……(表題作)普通じゃない超能力者たちの恋。それは切なくて、おかしくて、温かい。名手が紡ぐ、優しさ溢れる六つの恋物語。

■感想
表題作でもある「私は存在が空気」は、ジャンプやサイキック能力ではなく、存在感を消すという能力だ。親に虐待されてきたため、自分の存在感を消す力を手に入れる主人公。実際に消えるのではなく、存在感を消すのがポイントだ。

なので、体に触れたり声をだすと相手に気づかれる危険性がある。主人公の少女は、好きな男のことを存在感を消す能力を活かしてストーキングしている。部屋にまで入ってしまうのはやりすぎのような気がするのだが…。思わぬ犯罪を見つけ出すことになる。。。

「ファイアスターター湯川さん」は、ちょっとしたアクション映画を見ている気分にさせてくれる作品だ。パイロキネシス能力をもつ湯川さん。瞬時に相手を炭にしてしまうほどの能力で、最初は何もない普通の日常が描かれているが、組織の殺し屋と対決したりもする。

この殺し屋のキャラもよい。片手で生活し、礼儀ただしく普段はどもりながら話をする青年。キレるとどもりが治り本性を現す。湯川さんに片腕を焼き切られてしまい復讐のために湯川さんを狙う。シリーズ化してもよい流れだ。

「サイキック人生」は超能力をもつ家系の少女の物語だ。透明な手を動かして物を動かしたり、人にいたずらができる能力。ただ、その能力が人にばれると家系の掟として殺害しなければならない。幽霊がいるいないの論争から、自作自演で超能力を使って幽霊騒ぎを起こす少女。

時代を反映しており、その超能力を使うシーンが動画で撮られ拡散されたりもする。透明な手の超能力は、実は暗殺にも適している。対象者の動脈を透明な手を使って切断し、ひそかに殺すことができる、恐ろしい能力だ。

どれもがファンタジーにあふれていてよい。



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