2024.1.9 近未来のテロを長大な物語で描く 【笑って人類!】
笑って人類! [ 太田光 ]
評価:2
■ヒトコト感想
爆笑問題の太田光が書いた小説。世界のテロの関連をユーモアを交えながら描いている。世界の平和を実現するために、地球規模でテロを撲滅するための活動をする。世界の首脳が集まった場でテロが発生し首脳たちが死んでしまう。偶然生き残ったピースランドの首相である富士見が、新たな世界平和のために動き出す。
近未来の話なのだろう。アンドロイドやネットワークの高度化が描かれている。アメリカを想定したようなフロンティア合衆国。フロンティアの大統領には臨時的にアンという若い女性が就任する。日本をイメージしたピースランドの首相はちょっとダメな雰囲気がある冨士見首相だ。テロ組織内部で苦悩する者たち。謎のテロ組織を率いる人物の正体が本作のポイントとなるのだろう。
■ストーリー
“マスターズ和平会議”はテロ国家共同体ティグロ代表・ブルタウにより破壊された。会議に遅刻し、世界に恥を晒したピースランド首相・富士見はマスコミから糾弾され、デモ隊から生卵をぶつけられ、支持率は地に落ちた。しかし彼は会議を再開するべく、フロンティア合衆国の大統領代理・アンに想いを込めた手紙を送る。富士見を取り巻く桜を始めとした個性のキツイ秘書たちと、アンと彼女を支える国務長官・ダイアナは、武器ではなく「言葉の力」で、どんな国のどんな立場の人間も置き去りにせず、世界を一つにしようとする。しかし、両親をテロで亡くしたアンには、ある秘密があった――。
■感想
テロ国家は少し前のイスラム国などをイメージしているのだろうか?テロ国家共同体であるティグロの代表としてブルタウが登場してくる。世界の首脳たちが一堂に会してテロを撲滅するために話し合うのだが…。その場で、ブルタウがフロンティア合衆国の大統領と握手をした瞬間、爆発し各国の首脳たちは皆死んでしまう。
ティグロのテロ行為により、世界の平和への道は停滞したかと思いきや…。ピースランドの首相である富士見はトイレに入って遅刻したため、テロ災害から逃れていた。
お笑いの要素がちょくちょく挟まれている。基本は富士見と臨時大統領のアンが世界平和に向けて活動を行う物語だ。それに平行してテロ組織であるティグロ内部ではブルタウのテロに驚いており、そこでの真の目的がはかれずにいる。
ティグロ内部でも平和に向けた動きは歓迎されるはずなのだが…。ブルタウがテロを起こした後に、犯行声明が出される。世界を震撼させるテロであり、ネットワークを利用してあらゆるテロを実現しようとする。さらには人間の体を原子爆弾とみなして爆破することができるという驚きのテロを実現しようとする。
テロの主犯は実は…。AIやネットワークが高度に発展した社会なので、あらゆる可能性が考えられる。お笑いの要素がありながら、現実世界での様々な問題も盛り込まれている。都合よく言葉の力で世界の平和を呼び込むというのはやりすぎな気がするのだが…。
ラストの展開は確かに驚きではある。アンがなぜ人間原爆のターゲットとされたのか。現実では様々な国で戦争が起きている。テロとはまた趣旨が異なるのかもしれないが…。長大な物語のオチとしては弱い気がした。
読み切れる根気がある人におすすめだ。
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