リバー 


 2023.7.27      犯人に翻弄される関係者たち 【リバー】

                     
リバー /集英社/奥田英朗
評価:3.5
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■ヒトコト感想
すさまじい作品だ。連続殺人事件の捜査がメインなのだが、十年前の事件と同一犯なのか。犯人と思われる人物のエピソードや捜査関係者。そして、報道関係者や十年前の事件の被害者家族まで。それぞれが事件を追いかけ続ける。犯人目線のパートでは本当に無実なのでは?と思わせる雰囲気がある。

捜査上では、ある程度犯人が絞り込まれた感じになるが、最後まで真犯人が誰なのかがわからない。関係者たちの思惑が交錯し、次々と運命の繋がりなのか関係者たちの行動が別の関係者への影響へと繋がっていく。結局、犯人は自分が連続殺人事件の犯人だと認識しているのだろうか。巧妙に証拠を隠しながら新たな事件を繰り返す。ラスト間際での最後の殺人については衝撃的な関係者の繋がりがある。

■ストーリー
同一犯か? 模倣犯か?群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見!十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか――人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!

■感想
連続殺人事件が発生した。十年前の事件と同様の手口であり、警察は神経をとがらせているのだが…。それぞれの登場人物の視点で物語は展開される。警察は十年前の失態を挽回するために今度こそは、という強い気持ちで捜査を続ける。

すでに退職した十年前の元刑事にも頼り、捜査を続ける。強烈なのは十年前の事件で容疑者となっていた男と元刑事のやりとりだ。男はどこか警察をあざ笑うような行動をとる。最終的にはヤクザとトラブルとなり命の危険が迫ったりもするが、元刑事との駆け引きがすさまじいインパクトがある。

若手新聞記者が事件をスクープする。犯人と思われる男の関係者と親しくなり、情報を入手する。報道規制が敷かれたとはいえ、十年前の事件の被害者家族がいまだに犯人を逮捕するために独自に動いており、その男と新聞記者が親しくなり、独自の情報を入手する。

執念の調査とスクープだ。さらには、被害者家族の男が、警察にしつこく付きまとい、情報を入手し犯人を逮捕しようとやっきになる。議員の息子も容疑者となり多重人格の気がある。それを調査する犯罪心理学者なども登場し混沌としてくる。

圧巻なのは犯人目線のパートもあるのだが、そこでも読者に真犯人が誰なのか最後までわからない状態にあるということだ。犯人は無自覚に事件を起こしている可能性がある。一度別件逮捕され、そこで黙秘を貫き釈放さるとすぐに次の犯行が起こる。

ここまですると、別の真犯人がいるのでは?と思えてしまう。そこから、どのようにしてラストにつなげるのか。ラストの流れがすさまじい。結局、犯人は断言されないのだが、すさまじくインパクトのある流れとなっている。

強烈な物語であることは間違いない。



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