長江哀歌


 2022.8.15     コンクリートのビルをハンマーで破壊する【長江哀歌】

                     
長江哀歌(ちょうこうエレジー)/チャオ・タオ,ハン・サンミン,ワン・ホンウェイ,ジャ・ジャンクー,リン
評価:2.5

■ヒトコト感想
三峡ダムというのは、中国で大雨が降った際に氾濫する危険性があり、氾濫すると何十万人もが洪水被害にあうということで情報として知ってはいた。三峡ダムの建設により水没する運命の町をテーマとした作品。印象的なのは街の汚さというか破壊途中のビルの数々だ。

水没する前提ということなのだろうか。コンクリートのビルを作業員がハンマーを持ち手作業で破壊する。わずかな賃金で肉体労働をし、別れた妻を探し出そうとする。一方で音信不通の夫を探す妻も描かれている。夫は仕事にまい進しすぎた結果の音信普通だったということなのだが…。作中ではセリフが少なく、寡黙で淡々と作業をするのが印象的だ。あとは、ものを食べるシーンも印象的に描かれている。

■ストーリー
大河・長江の景勝の地、三峡。舞台はそのほとり、二千年の歴史を持ちながら、ダム建設によって伝統や文化も、記憶や時間も水没していく運命にある古都。16年前に別れた妻子に再会するため、山西省からやってきた炭鉱夫サンミンと、2年間音信不通の夫を探すシェン・ホンの2人を軸に描かれる、時代のうねりに翻弄されながらも日々を精一杯に生きる市井の人々の「生」の物語。

■感想
どれくらい前の話なのだろうか。中国の田舎町というのは、今の日本から考えるととんでもなく昔のような気がした。コンクリートむき出しの巨大なビルが乱立しているが、決して近代化しているようには見えない。廃墟のビルが大量に建っているという感じだ。

ダムに沈む町だからと、役所が破壊するビルをマークしていく。ビルの破壊シーンを印象的に描いており、爆破するシーンもある。ただ、古い工場やコンクリートのビルにハンマーを振り下ろして破壊ているのが印象的だ。

音信不通の夫を探しにやってきた妻目線の物語は、街が新たなステージへ進むために必死に働く人々が描かれている。特に音信不通の夫を見つけ出したは良いが、仕事人間のため妻にかまっている暇はない状況なのだろう。

時代の転換期であり、家族を蔑ろにしても仕事に打ち込む必要があったのだろう。どちらの思いもわかるが、さすがに2年も音信不通というのはやりすぎだ。ちょっとした酒盛りや食事シーンが印象的に描かれており、無言で飲み食いする咀嚼音が強烈に印象に残っている。

別れた妻と娘に会いにきた男。さすがに16年ぶりにやってきて、妻を連れ戻したいというのはありえないだろう。田舎独特の雰囲気というか、女を物のように扱い、新しい夫に対して連れて帰りたいと交渉する。妻の思いなどおかまいなし。

妻の兄に3万元を貸しているからと、まるで妻を3万元で売るような発言もある。これが中国の田舎町なのだろう。どれだけ都心部が発展したとしても、ハンマーで巨大なコンクリートのビルを破壊するような文化なのだろう。

強烈なもの悲しさがある作品だ。



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