つるかめ助産院 


 2023.8.1      出産の過酷さ 【つるかめ助産院】

                     
つるかめ助産院 (集英社文庫) [ 小川糸 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「食堂かたつむり」の小川糸が描いた助産院の物語。ほのぼのとした沖縄の助産院での物語であり、作中で登場してくる食べ物は、まさに食堂かたつむりで登場したように、オーガニックで健康的な食事のように思えた。心に傷を負ってつるかめ助産院へやってきたまりあ。生い立ちは恵まれていないが、出産するこの瞬間は、様々な人たちから暖かく迎えられる。

孤独だった過去を乗り越え、夫が行方不明の状態であってもまりあは出産を決意する。沖縄という土地と、一緒に働く人たちがそれぞれ何かしら心に傷を負っているのがポイントかもしれない。出産の描写は驚きに満ちている。出産直前まで外を散歩して陣痛がきて動けなくなる。この感覚は男には理解できない部分だ。

■ストーリー
夫が姿を消して傷心のまりあは、一人訪れた南の島で助産院長の鶴田亀子と出会い、予想外の妊娠を告げられる。家族の愛を知らずに育った彼女は新しい命を身ごもったことに戸惑うが、助産院で働くベトナム人のパクチー嬢や産婆のエミリー、旅人のサミーや妊婦の艶子さんなど、島の個性豊かな仲間と美しい海に囲まれ、少しずつ孤独だった過去と向き合うようになり―。命の誕生と再生の物語。

■感想
つるかめ助産院の物語。個性豊かなメンバーに囲まれ、夫に失踪されたまりあが助産院で出産するまでを描く。とにかく食事がおいしそうに描かれている。出産と食事が直接結びつくわけではないのだが、沖縄の土地で作らえたものを利用した健康的な食事の数々。

もちろん、出産は長丁場なので途中でおなかがすかないように、事前に何かをお腹にいれておくなどをする。命の誕生ということで、それなりに男には通じない何かがあるのだろう。男にとっては強烈にインパクトのある作品だ。

つるかめ助産院には訳アリの者たちがいる。ベトナムから来たパクチー嬢は父親と問題があった。旅人のサミーは両親との折り合いが悪く、洞窟で暮らしながら世界を旅しようと考えている。つるかめ助産院の鶴田亀子は両親が自殺している。

まりあはクリスマスの日に捨て子として拾われ、里親の元で育った経緯がある。そこから結婚したは良いが妊娠が判明した段階で夫が失踪する。そもそもまりあは夫を探すために沖縄にやってきて、偶然つるかめ助産院に拾われたという感じだ。

子どもを産むということはどれだけ大変なのか。流産をした艶子がひたすら想像妊娠し、出産の真似事をして人形を出産する場面は強烈だ。艶子本人も理解してはいるが、やめることができない。男では感じられない出産に関する強い思いを感じた。

傷心のまりあは出産するのだが、そのタイミングで失踪していた夫がまりあの前に登場してくる。このあたり、あまりに都合がよすぎる。どういった理由で夫が失踪していたのかは不明だが、突然良いタイミングで戻ってくるのはできすぎだ。

男では感じられない何かがある。



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