透明な螺旋 


 2023.3.12      すべてを理解している湯川 【透明な螺旋】

                     
透明な螺旋 [ 東野圭吾 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ガリレオシリーズ。知られざる湯川の真実。冒頭から女性が子どもを産み、ひとりで育てなければならない状況が描かれている。シングルマザーにならざるお得ない現実。そして、子供を捨てる決断をする。舞台は現在にうつり殺人事件が発生する。事件を捜査するのはいつもの草薙と内海だ。そこに今回は事件の関係者と近しいということで湯川が登場してくる。

さらには湯川が認知症の母親を介護している描写もある。事件はDV男が何者かに殺されており、DV被害者の彼女が消息不明となる。事件としてのトリックはごく普通のものではあるが、今回も湯川がいつの間にかすべてを看破しており、ひとりで関係者に対してアドバイスし事件を解決している。湯川の謎解きの直前までの、どこまで湯川が把握しているかの不可解さはすさまじい。

■ストーリー
シリーズ第十弾。最新長編。今、明かされる「ガリレオの真実」。房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。「愛する人を守ることは罪なのか」ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。

■感想
男の銃殺死体が見つかった。調べていくとDV男ということが判明し、DV被害を受けていた女が同じタイミングで行方不明となっていた。明らかに女が怪しい流れとなる。草薙と内海が事件を捜査していく中で、女視点の物語となる。

DV男というのは最初は魅力的にうつるのだろう。何かほころびが発生すると、そこからDVがスタートする。ある意味、マインドコントロールのような状態で女は激しい暴力を受けたとしても、その後優しくされると麻痺してしまうのだろう。第三者の介入が必要な状況だ。

中盤以降で、新たな関係者が登場してくる。DV被害の女と行動を共にしている女。そして、関係者と思われるクラブのママ。ここで湯川が登場してくるのだが、湯川と驚きの関係が明らかとなる。冒頭からシングルマザーが子どもを育てることができず施設にあずける描写がある。

本作ではその前振りが湯川の出自に関係してくる。実は湯川の両親は育ての親であり、実の母親は別にいた。あえて、湯川が育ての親の介護をしている描写があるのは、そのことを強調するためだろう。

湯川が関係者となってはいるが、いつの間にか事件のすべてを把握し誰が犯人かを探り当てている。ただ、そのことを草薙や内海に言うことはない。ひそかに行動し関係者にアドバイスし、全てが良い方向に流れるように動く。

DV被害を受けている女の実の祖母がポイントとなる。本当に血のつながりがあるかの結論はでていない。どちらも、そうありたいと願っており、真実を知りたくないために殺人に至ったような流れとなっている。湯川が犯人に対してアドバイスする場面が本作のピークだ。

全てを理解している湯川と、それを知りながら、湯川から真実を告げられない草薙の立場も辛い。



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