トム・ゴードンに恋した少女 


 2022.4.7      9歳の少女の森林サバイバル 【トム・ゴードンに恋した少女】

                     
トム・ゴードンに恋した少女 / スティーヴン・キング
評価:2.5
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■ヒトコト感想
9歳の少女トリシアが深いの森の中で迷いサバイバル生活を行う物語だ。タイトルの由来は、サバイバル中のトリシアがラジオから流れてくるトム・ゴードンの活躍に心躍らせる場面があるからだろう。森で迷うことになった原因は母親と兄が喧嘩していたことにある。少女のサバイバル生活は強烈だ。水分補給が重要であり、食べ物はドングリを食べたりもする。

川で魚をとったりもする。9歳の少女が絶望的な幻覚を見ながらも、レッドソックスとトムゴードンの活躍を聞きながら生きる希望をなくさず前にすすんでいく。崖から滑落したり、蜂に刺されたりとかなりの危機に陥っているが、9歳が奇跡的な生還を果たす物語だ。自分の行方不明のニュースをラジオで聞く場面は強烈だ。

■ストーリー
深い深い森の始まりの地で、9歳の少女トリシアの試合は開始された。家族で来たピクニックが、いつしか迷い込んだ巨大な森でのサバイバルゲームと化していたのだ。離婚した両親。母と喧嘩ばかりの兄。うんざりなはずの彼らがいまは無性に恋しい。迫り来る虫に蛇、絶壁に急流、食料不足。しかも彼女の背後には、人智を越えたなにかが迫る……。少女の絶望的な状況を圧倒的な筆力で描く感動作。

■感想
母親と兄の喧嘩に嫌気がさし、森の中でトイレに向かおうとしたトリシア。気づくと森の中で迷っていた。恐ろしいのは舞台がアメリカだけに広大な森をイメージしてしまう。小川沿いに歩いたとしても、必ず森から脱出できるとは限らない。リュックに入った食料はわずか。

まさに9歳の少女ひとりに森の中でのサバイバル生活を強制する作品だ。唯一の気晴らしとしては、トリシアが手にもつラジオだけ。そこから流れてくるレッドソックスの試合だけが唯一の希望となる。

トリシアのサバイバル生活は強烈だ。水を確保したとしても、その水を飲み腹を下し吐いたりもする。水分が一番重要なのだが、序盤からかなり絶望的な雰囲気となる。食料としてはドングリや木の実を取って食べたりもする。かなりたくましい少女だ。

どれだけ腹が減ったとしてもドンぐりを食べるのはなかなか抵抗があるだろう。それだけでなく、川でニジマスをとり、魚を生でかぶりついたりもする。タンパク質を体が求めているのだろうか。アメリカ人が生魚を食べるのはかなり抵抗感があるはずだ。

レッドソックスの試合をラジオで聞きつつ、目の前には恐ろしい幻覚が迫ってくる。体はボロボロ、精神は衰弱し、体力も消耗している。もはや生還は絶望的かと思われたその時…。ラストの流れはある程度想定できてしまうのだが…。

自分が行方不明というニュースをラジオで聞いたり、トリシアを誘拐した容疑者が逮捕されたりと、トリシアとは別次元で現実世界が進んでいるような感じすらある。少女の生命力は意外なほど強い。水と食べ物があれば、人はそう簡単に死なないのだろう。

ある程度想定の流れであるのは間違いない。



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