父 Mon Pere 


 2022.7.14      健忘症の父親とバリで生活 【父 Mon Pere】

                     
父 Mon Pere [ 辻仁成 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
パリで生活するぼくは、父親とふたりっきりで生活していた。健忘症を発症した父親と、結婚を間近にひかえたぼくがどのような生活を続けるかが物語のポイントだ。コロンビア人のお手伝いさんがいるので父親の面倒をみることには問題ないのだが…。慣れた家政婦が退職した後、新たにきた家政婦と父親がトラブルとなる。

健忘症の父親は金を家政婦に盗まれたと言う。家政婦は盗んでいないと言う。パリという場所や、不法滞在者ではあるがマジメに働く家政婦の若い女。婚約者やその母親との関係や、実は母親は浮気相手とドライブ中に事故にあって死亡したのだが、その浮気相手が婚約者の父親だったという衝撃がある。父親との濃密な関係が描かれている作品だ。

■ストーリー
パリで生まれ育った「ぼく」は、ママを事故で亡くして以来、この街でパパと二人きりで生きてきた。だが、七十歳を過ぎたパパに、健忘症の症状が出始める。彼が迷子になるたびに、仕事中であろうと、真夜中だろうと、街を駆けずり回ることに。一方で、結婚を迫ってくる恋人との関係にも頭を悩ませていた。実はぼくらの始まりには、両親の過去が深く関わっていて―。家族と愛を巡る運命の物語。

■感想
父親とふたりでパリで生活してきたぼく。健忘症を発症し何かと心配の種がつきないぼくの物語となっている。パリという場所がらもあるのだろう。多国籍な印象があるのは、パパの家の家政婦としてコロンビアの女性が働いているからだ。

家政婦も高齢のため、新たな若い家政婦がやってくることになるのだが…。父親と家政婦の折り合いが悪く、父親から家政婦が金を盗んだと連絡が入る。家政婦は盗んでいないと言うのだが…。ぼくは健忘症の父親の勘違いの可能性もあるため、どうすればよいか苦悩することになる。

貧しいコロンビアからの不法入国者だからと無条件に家政婦を疑うのか。それとも父親の勘違いなのか。母親の形見の指輪が家政婦のバッグの中から見つかるなどしたことで、より家政婦への疑いが強くなる。オチとしては、金を盗まれたのは父親の勘違いで、指輪については臨時の家政婦が盗んで別の家政婦のせいにしようとしたという流れだ。

疑いをかけられた家政婦は、パリでの華々しい人生を計画していただけに全てが水の泡となってしまう。ひとりの人間の人生を壊してしまった形となっている。

母親の事故死は、実は婚約者の父親が関係していた。自分の婚約者と、結婚したあとに義理の親となる人物と深い関係があった。その事実を父親に告げた際にはどのような結果となるのか。いつの間にか、婚約者の母親とぼくの父親が同世代ということで、子供たちを抜きにして会話をしていた。

話がこじれるかと思いきや、とんとん拍子にうまくいく。家政婦とのトラブルがあり、父親の健忘症が激しくなる中で、前向きに希望がもてる流れとなっている。

パリでの生活というのは作者の実生活の影響が大きいのだろう。



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