天使の軍隊 


 2023.10.26      北朝鮮と日本が協力する未来 【天使の軍隊】

                     
天使の軍隊 / 佐々木敏
評価:2.5
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■ヒトコト感想
本作が出版された当時、近未来ということで2020年にはこんな戦争になっているという想定のもとに描かれた作品。戦争のやり方が大きく変わる。そして、中国、韓国、北朝鮮と日本の関係がかなり変わっている。現実では2020年には到底本作のような関係性にはなっていない。中国と韓国に対して日本は敵対関係にあり、北朝鮮が内部的に日本にすり寄るという流れのようだが…。

中国と北朝鮮が戦争に発展しそうになるが、それを防ぐのは非合法なテロ組織だ。闘いに人を使うことなく機器だけで対応する。人が死ぬことはない、新しい形の戦争3.0として描かれている。現実はそれに近い形になっているのだが、それなりにインパクトがあるのは間違いない。

■ストーリー
2020年10月1日。朝鮮中央放送は、キム・ジョンイル(金正日)朝鮮労働党総書記兼朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国防委員長が78歳で死去したと報道した。「敬愛する天皇陛下ならびに日本国民の皆様。」で始まる遺書の真意とは…。膨大な情報ストックを、驚異的な知見で読み解き、未来を「必然」として的確に予知する。

■感想
北朝鮮がキム・ジョンイルの死のタイミングで日本と親密になる。ありえない展開でスタートする本作。中国や韓国と敵対し北朝鮮と親密になる未来はきていない。ただ、作中ではその内容で物語が進んでいる。

表題であり天使の軍隊というのは、人間が死なない、機械だけによる軍隊のことだ。未来では人は遠隔地から操作する機械で戦争する世界がくると想定してのことだが…。現実にもドローンでの戦闘など近いものがあるが、やはり戦争に兵士が必要なのはかわりない。

日本内部の有名メーカーが闇のテロ組織として暗躍する。技術的な有利性を活かし、外部からのテロの依頼を有償で受ける。国籍不明の軍隊はテロということになる。従来通り人が死ぬ戦争を戦争2.0とし、人が死なない機械での戦争を戦争3.0としている。

Web2.0なんて言葉が流行った時期の作品なのだろう。作中の2020年になっても、結局は戦争で人が死ぬことは変わりない。本作では中国と北朝鮮の戦争を防ぐために、テロ組織が機器での戦争を展開するという流れだ。

闇のテロ組織は秘密管理が徹底している。秘密が漏れることを恐れ、関係者の身体には機器が埋め込まれている。秘密が漏れそうになったタイミングでその機器が動作し、毒薬が調合され死んでしまう。そこまで徹底した情報管理によりテロ組織は維持されている。

ありえない未来として描かれた本作。ただ、もしかしたらこんな現実になっていたのかもしれない。日本の有名企業が、裏ではテロ組織として暗躍していた。そこまでリスクをとる理由については描かれていない。

別の世界線ではありえたのかもしれない。



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