TAR/ター


 2024.2.11    架空の指揮者の盛者必衰【TAR/ター】


                     
TAR/ター
評価:3

■ヒトコト感想
架空のリディア・ターという天才女性指揮者を描いた作品。才能はあるがエキセントリックな性格で、女性が好き。アカデミーの生徒に対しても辛辣な評価をする。ターのオーケストラの練習風景はすさまじいこだわりと迫力がある。ターの日常を描きつつ、直面する問題を描いている。世間からはカリスマとして認識され、圧倒的なプレッシャーの中で消耗していくター。そんな時に、かつての教え子が自殺したと連絡が入る。

ターの厳しい指導や恋愛関係の問題などがマスコミにたたかれはじめる。複雑なプライベートと指揮者としてのプレッシャーに押しつぶされ、おかしくなる場面は強烈だ。新たに魅力的で能力のあるチェリストが登場するのだが…。ターの助けにはならなかった。

■ストーリー
世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。彼女は天才的な能力とそれを上回る努力、類稀なるプロデュース力で、自身を輝けるブランドとして作り上げることに成功。現代音楽界を牽引する圧倒的カリスマとして君臨するが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんな時、かつてターが指導した若手指揮者の死をきっかけに、彼女の完璧な世界は少しずつ崩れ始める―。

■感想
リディア・ターの指揮に対するこだわりというのが序盤に強烈に描かれている。ドイツのベルリン・フィルで史上初の女性指揮者となり、圧倒的なカリスマ性をもっている。天才的な才能と、それに負けないほどの努力を続けるター。

プライベートではオーケストラのバイオリン奏者と一緒に暮らしており、養子をもらい生活している。子供に対しては自分のことをパパと呼ばせている。LGBTでの性差について、作中ではスキャンダルとしては触れられておらず、周りも認知しているような感じだ。

圧倒的な才能で周りを従えている。指揮でのこだわりとオーケストラのメンバーを圧倒する力。副指揮者をあっさりと首にしたり、気になったチェリストを大抜擢したり。周りはターの才能に圧倒されているので少し小言は言うにしても、だれも逆らうことができない。

それだけの才能がある場面が多数描かれている。そこから、かつての教え子の自殺を知る。セクハラだとかパワハラだとかの話題がでる。世間でターが叩かれはじめてからのターの精神の変化はすさまじい。ここまでボロボロになるかという感じだ。

すべてを失いタイで仕事をすることになるター。世界的な指揮者が、世間にたたかれるとタイでの指揮者としての仕事しかなくなるのは強烈だ。それまでのプライベートなごたごたやプレッシャーすべてから解放されたのは確かかもしれないが、ターからしたらタイは生活しやすい場所ではない。

ドイツでセレブな生活をするターが自然に思えた。それまでターの才能に寄り添っていたものたちは、一気に離れていく。盛者必衰が露骨すぎる。

架空の人物ではあるが、ターの存在感はすさまじい。



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