タングル 


 2023.6.7      量子コンピュータはすさまじい 【タングル】

                     
タングル/小学館/真山仁
評価:3
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■ヒトコト感想
世間で噂の量子コンピュータを描いた作品。研究段階でコンピュータの歴史を変えると言われる技術。量子コンピュータの原理が説明されているのだが、最も驚いたのは現在のコンピュータが電力の面で限界がきているという部分だ。高い計算能力を半導体で実現する代わりに計算時に発生する熱を冷却するために大量の電力が必要となる。

シンガポールと日本で研究施設を設立し、将来のために量子コンピュータを研究する。それぞれの国の思惑と、純粋に量子コンピュータを実現したい者たちの葛藤が描かれている。後半で、突然鷲頭とサムライキャピタルが登場し、救世主となるのはいつものパターンかもしれない。量子コンピュータの話は非常に興味深い。

■ストーリー
追い詰められたニッポンは再びライジング・サンとなれるのか!?地球温暖化を防ぎ、世界を変える可能性を持つ光量子コンピューター開発の第一人者である東都大学早乙女教授は、開発に前向きでない日本を見限りシンガポールの地で研究を進めていた。モノ作り大国だった頃の天才的な技術者を募り、シンガポールの若者達を教育しながら前進する早乙女研究所。実現化が見えてきた時に利権を狙う大国たちが介入しようとしてきて……。そんな中、ニューヨークのファンドから、あの男が早乙女教授の前に姿を現した……。

■感想
かつて技術大国であった日本。再び技術大国の地位を取り戻すために世界を変える量子コンピュータを開発しようとする。かつてモノづくり大国であった日本は、今は開発に不便な地となっている。天才的な技術者をつのり早乙女研究所はシンガポールの地で資金を得て量子コンピュータの実現にまい進する。

革新的な技術であり、開発に成功した場合は莫大な利益が見込まれる場合、多数の有象無象たちが近寄ってくる。日本とシンガポールのそれぞれでの強烈な駆け引きが実行される。

量子コンピュータの説明は非常に興味深い。現在のコンピュータと何が違うのか。そして、どんな課題があるのか。量子コンピュータが実現されると、現在のすべての暗号が簡単に破られてしまうらしい。となると、量子コンピュータが実現された瞬間に、量子コンピュータをもつ者と持たない者の間に明確な格差がでてしまうということだ。

特に軍事的なインパクトは大きいのだろう。早乙女たちは純粋に研究者として量子コンピュータの開発を続ける。国の横やりを気にしない、純粋な技術者としての信念を感じる流れだ。

国が関わるので妨害の規模もでかい。日本の技術者がいわれのない罪で逮捕されたり、シンガポールの研究者が日本の研究者からイジメにあっているなどの報道が出始める。量子コンピュータの開発に成功した際には、その利益を日本とシンガポールのどちらが得るのか。

シンガポール側の技術者の問題点も語られている。これがシンガポールの真実なのだろうか。他の東南アジアの国と比べると、一風変わった国というイメージがあるのだが、技術大国というイメージはない。

量子コンピュータの説明は非常に興味深い。



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