太陽の子


 2024.3.26    一発逆転を狙う原子爆弾開発【太陽の子】


                     
映画 太陽の子 豪華版 [ 柳楽優弥 ]
評価:3

■ヒトコト感想
戦時中の日本で原子爆弾の研究をする若き科学者石村を描いた作品。戦争で若者が次々と戦地へ送られていく。それはいわば死を意味する。そんな中で、アメリカとの原爆開発競争に勝つために研究者たちは必死になる。科学者は戦争に送られることはない。自ら志願したとしても、教授から研究室に戻されたりもする。戦争中での悲惨な現実。驚きなのは、焼け落ちる危険性があるからと次々と家が壊される場面だ。有無を言わさぬ迫力がある。

研究者の石村は物理学に魅了され、ひたすら実験に没頭する。幼馴染の世津と戦地から一時帰国した弟の裕之。世津とのちょっとした三角関係のような雰囲気となっている。戦争に向かう弟、原爆を開発する兄。世津だけが未来を見据え、戦争が終わった後のことを考えているのが印象深い。

■ストーリー
1945年の夏。軍の密命を受けた京都帝国大学・物理学研究室の若き科学者・石村修(柳楽優弥)と研究員たちは、原子核爆弾の研究開発を進めていた。研究に没頭する日々の中、建物疎開で家を失った幼馴染の朝倉世津(有村架純)が修の家に居候することに。時を同じくして、修の弟・裕之(三浦春馬)が戦地から一時帰郷し、久しぶりの再会を喜ぶ3人。ひとときの幸せな時間の中で、戦地で裕之が負った深い心の傷を垣間見る修と世津だが、一方で物理学に魅了されていた修も、その裏にある破壊の恐ろしさに葛藤を抱えていた。

そんな二人を力強く包み込む世津はただ一人、戦争が終わった後の世界を見据えていた。それぞれの想いを受け止め、自分たちの未来のためと開発を急ぐ修と研究チームだが、運命の8月6日が訪れてしまう。日本中が絶望に打ちひしがれる中、それでも前を向く修が見出した新たな光とは――?

■感想
戦時中の日本は勝つ望みがない状態でありながら、一発逆転を目指している。それは原爆の開発だった。物理学の研究者たちが必死に研究し、早期に原子爆弾を開発しようとする。ただ、設備がなく材料もない。ウランを手に入れるために陶器の染め物の職人の元にやってきたりもする。

超高速で動く遠心分離機でウランだけを取り出すために四苦八苦する。若者たちが命をかけて戦っているなかで、研究者たちは実験を続け原子爆弾を開発するために必死となる。この苦悩がすさまじくリアルに描かれている。

戦争の悲惨さも描かれている。世津の家は軍の命令で取り壊され、石村の家に祖父と世津が疎開してくる。そこに戦地から一時帰国してきた弟の裕之も帰ってくる。幼馴染3人の幸せな生活。ここで、世津は裕之に気があるようなそぶりがある。

石村は世津のことが気になっている。石村は長男ではあるが、何かと遠慮しがちで、弟に譲ることがある。世津との関係がどうなるのか…。弟の裕之は進んで戦場に向かおうとしている。実は裕之は無理していると後で判明する。これが戦争の悲惨さだ。

8月6日に広島に原爆が落とされる。結局、石村たちの研究は間に合わなかった。失意のどん底となる石村たち。すべてが真実に基づいているのだろう。エンディングでは実際の物理学研究室のメンバーの写真が登場してくる。キャストもどこか顔が似ている人物を選んでいるようで、リアル感がすさまじい。

戦争中の科学者というのは、いわば特権があるのだろう。研究が戦争での日本の立場を大きく変える可能性がある。命を賭けて戦うよりも、頭脳を使って成果をだすということだ。

戦争中での科学者の立場が良くわかる作品だ。



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