大河への道 [ 立川志の輔 ]
評価:2.5
■ヒトコト感想
地域の振興を検討する会議で、取り立ててアピールポイントがない千葉県香取市は、伊能忠敬を大河ドラマとして、その舞台として町おこしを考えていたのだが…。伊能忠敬が地図を作ったということで有名だが、実は伊能忠敬は完成させていなかったという衝撃の事実が明らかとなる。本作の7割は江戸時代の描写であり、ひたすら地図作りが描かれている。
どのようにして正確な地図を作ったのか。歩数で距離を測り、あとは計算で地図を作る。すべてが手書きで、墨をこぼしたりすると、そこからすべてやり直しになるなど気の遠くなるような作業の連続だ。本作のメインはこの地図作りと、伊能忠敬が死んだあとでも、そのことを隠して地図を作り続けた者たちの葛藤が描かれている。
■ストーリー
千葉県香取市。市役所の総務課に勤める池本保治(中井貴一)は、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められ、苦し紛れに大河ドラマ制作を提案。思いがけずそれが通り、郷土の偉人、伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの企画が立ち上がってしまう。ところが企画を進めるうちに、日本地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかった!?彼は地図完成の3年前に亡くなっていた!という驚きの事実が明らかに……。江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく日本初の全国地図誕生秘話。そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだとんでもない隠密作戦があった――。
■感想
苦し紛れの大河ドラマ制作を提案。地元では伊能忠敬のことを親しみを込めてチューケイさんと呼ぶらしい。忠敬をチューケイ。実際に江戸時代に徒歩で距離を測り日本地図を完成させるというとてつもないことを実現したので、大河ドラマにしてもよいような気もするのだが…。
作中では脚本家が調査したところ、実際には日本地図の完成前に伊能忠敬は死亡していたことがわかった。つまり伊能忠敬は日本地図を完成させていないという衝撃の事実が判明する。
ここから、江戸時代に舞台はうつり、伊能忠敬が死んだ直後の混乱が描かれている。伊能忠敬の仲間たちが、忠敬の死を隠し、お上から資金の援助を受けながら地図作成を続けると決断する。本作はこの江戸時代のパートがメインとなっている。
地図作成の過酷さ。すべてを手書きで作成しているので、少しのミスでやり直しが発生する。徒歩での距離の計測についてもすべて計算しながら行っている。かなり強烈なインパクトのあるパートだ。それなりに流れとしての面白さがある。
結局は途中で忠敬が死んでいるのでは?という疑義が発生するが、それを巧みにかわしながら、地図製作を続ける。最後の最後でお上に対して完成した地図をお披露目する。結局は事実として伊能忠敬は地図を完成させていない。
地図を作り上げたのは周りの仲間たちだった。名前も知らない忠敬の仲間を主人公に地図作成の物語を作るのか?なんてことまで持ち上がっている。歴史的な事実と世間のイメージ覆す流れ。大河ドラマにするには地図を作り上げたという実績が必要なのだろう。
本作は江戸の物語だ。