灼熱の魂


 2023.5.14    衝撃的なある女の人生【灼熱の魂】

                     
灼熱の魂
評価:3.5

■ヒトコト感想
亡くなった母親のナワルの遺言で、父親と兄を探すことになった双子の姉弟のジャンヌとシモン。強烈な作品だ。ナワルの人生がすさまじく、双子が調査することで自分たちの出自を含めた新たな真実が明らかとなる。特に後半の怒涛の真実の暴露はすさまじい。ごく普通の幸せな生活を送ってきたジャンヌとシモンだが、実は衝撃的な事実があった。

ナワルが生きた時代、そして宗教的な弾圧などがありナワルの精神力の強さがわかる物語だ。そして、最後の最後に父親と兄に双子から手紙を渡させるというのは、なんだかものすごく残酷なことのような気がした。父親と兄は自分がどんな存在か知らない。それを全て知らせるというのはとても残酷なことだ。知らなくてすむなら知らないでいた方が良い。

■ストーリー
亡くなった母ナワルの遺言状で初めて、父親と兄の存在を知った双子の姉弟ジャンヌとシモン。 父を探し出し、母の残した手紙を渡すため、中東にあるナワルの故郷を訪れたジャンヌは、地元の人々の冷たい反応に愕然とする。 そして、1970年代の宗教対立の中でナワルが体験した、凄惨な過去を知ることに。

■感想
ネタバレを含めて書くが衝撃的な作品だ。宗教対立の中でナワルは禁断の恋をし子供を宿す。村から追い出され産んだ子供も施設に入れられてしまう。双子はこの施設に入れられた子供が兄だと思い、調査をするのだが…。幼い兄は施設からテロ組織に引き渡されテロの戦闘員として成長していた。

ナワルが宗教弾圧に負けずに自分の信念を貫く。そして、自分たちを弾圧し、村から追い出し子供を奪った大本のボスを射殺してしまう。このナワルの信念の強さが双子の調査への執念に繋がっているような気がした。

ナワルは逮捕され牢獄に入れられる。そこで伝説の拷問人に引き渡されレイプされてしまう。ここで衝撃的なのは、レイプされて妊娠しその結果生まれた子供が双子だったということだ。それまで双子はごく普通に、母親が父親と結婚し生まれたと思い込んでいたのだが…。

相当なショックだ。それらの情報が回想形式の物語の中で小出しにされる演出がすばらしい。はっきりと明言されないが、前後の文脈と言葉で連想できてしまう。そこからさらに怒涛の衝撃的展開がまっている。

行方不明の兄を探した末に行き着いたのはテロ組織だった。そこで兄が戦闘員として成長し最後には拷問人になっていたとわかる。母親をレイプした拷問人の仲間だと考え嫌悪感を覚える双子なのだが…。実は母親をレイプした拷問人本人が兄だった。

つまり、兄は双子の父親でもあった。ナワルはそのことに気づき衝撃を受け、遺言として手紙をしたためる。ラストで兄であり父である男に、兄向けと父親向けの手紙を読ませるのはいかにも残酷だ。男にとっては、知らなければ知らない方が良い真実であったのは間違いない。

複雑だが、衝撃的な結末を迎える物語だ。



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