すずめの戸締り


 2023.3.20     鈴芽を助ける最高の男たち【すずめの戸締り】

                     
小説 すずめの戸締まり 角川文庫 / 新海誠
評価:3.5

■ヒトコト感想
鈴芽と草太の物語。日本で発生する地震は実は地中から扉を開けてでてきたミミズの影響だという流れ。ミミズがでてくる扉を締めるのが草太の役目だ。鈴芽は偶然草太と出会い、そこから巻き込まれていく。扉から飛び出たミミズが地中に到達すると巨大地震が発生する。それを誰にも知られない形で阻止していたのが草太の一族ということだ。

草太が子どもの椅子にされてからが本作のメインだろう。鈴芽が草太を元の姿に戻すために日本を縦断する。鈴芽が日本各地で助けを受ける人々の優しさが心にしみる。鈴芽のロードムービー的なイメージかもしれない。あとは、登場してくる男たちが、誰もが良い男というのがすばらしい。軽口をたたくが、草太の同級生の男なんかは最高だ。

■ストーリー
私の名前は、鈴芽。17歳の高校生。九州の静かな町で楽しく暮らしている。ある日、見知らぬ青年に「このあたりに、廃墟はない?」と聞かれた。「ハイキョ?」ととまどう私。彼、草太さんは、人がいなくなってしまった場所にある「扉」を探して旅をしているらしい。私は彼の後を追い、山の中の廃墟で古ぼけた扉を見つけた。彼の言葉を思い出し、扉に手を伸ばしてみると――。不思議な扉にみちびかれた私・鈴芽の、全国をめぐる“戸締まりの旅”が始まる!

■感想
ごく普通の女子高生の鈴芽だが、家庭環境は複雑だ。あとからわかるのだが、鈴芽は東日本大震災で母親を亡くしている。叔母に育てられ、何かトラウマがあるような雰囲気がある。実は鈴芽は幼いころに「扉」をくぐっていた。そのために、草太とかかわることになる。

草太のイケメン具合がすさまじい。長髪で長身。ちょっとぶっきらぼうだが優しい。鈴芽が密に恋心を抱くのだが…。序盤で草太はあっさりと子供の椅子にされてしまう。このあたり、魔法の世界的な雰囲気があるので、どこかジブリ作品のように感じられた。

鈴芽と椅子になった草太は要石の猫を追いかけ日本を縦断する。女子高生が叔母に連絡せずに知らない土地へ向かう。となると、その日泊まるのはどうするのか?という話となる。子供用の椅子を抱えて制服で旅をする鈴芽は確かに異質だ。

一人旅ということにしているのだが…。ここで周りの人々の優しさが強烈に表現されている。鈴芽はヒッチハイクをしたり、スナックのママの家にお世話になったり、田舎の旅館の娘と仲良くなったり。客観的に見ると変な旅人である鈴芽を皆が快く受け入れている。

最高なのは草太の友達だ。椅子にされた草太が教員免許試験に来なかったことを不審がり鈴芽と出会うことになる。ここで、最後の旅の道連れとして草太の友達と叔母が参加することになる。嫌な奴のような雰囲気があった草太の友達だが、最高な男だった。

叔母と鈴芽の複雑な関係を理解しつつ、場が盛り上がるように振る舞ったり。ボロボロのオープンカーで鈴芽の昔の家に向かう長旅へと出発する。普通に考えると鈴芽と叔母の関係には近づきたくないと思うはずなのだが…。

ラストのハッピーエンド具合も良い。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp