スペシャルズ 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話


 2023.1.9     見て見ぬふりをする政府【スペシャルズ 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話】

                     
スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~ [ ヴァンサン・カッセル ]
評価:3

■ヒトコト感想
実話をベースとした物語。自閉症の子供をケアする無認可の施設の運営を描いた物語だ。ブリュノが自閉症児童の面倒を見ているのだが、みな症状が重いのでひとりに対して支援者がひとりつかなければならない状態となっている。赤字運営の施設だが親たちからの要望で辞めることができない。病院や公的施設が放り出した子供たちの面倒を見るので、様々な事件が起きる。

毎日が常に戦争のような場所で職員たちも疲弊している。それでも続けるのは、子供たちが少しでも改善しているからだ。ブリュノが成長した自閉症児を就職するために奔走する姿が印象的だ。もはやブリュノは自分のプライベートを全て捨てている。政府の監査員が絶句するのもうなずける内容だ。

■ストーリー
パリで自閉症児をケアする施設を経営するブリュノと、ドロップアウトした若者たちを支える団体を運営するマリク。コワモテのふたりだが、社会からはじかれた子供たちをまとめて救おうと、日々奔走する。しかし、どんな問題のある子も断らないため、施設は常に満員。そんな無許可・赤字経営の施設に政府の監査のメスが入り閉鎖の危機に。さらに追い打ちをかけるような事件が―。

■感想
施設の子どもたちは突然暴れだし町を疾走したりもする。自分で壁に頭を打ち付けるので常にヘッドギアをつけていたりもする。壁にひたすら金槌のようなものを打ち付ける子供。誰もができる仕事ではない。施設の職員たちも、実は就職支援から派遣されてきた問題のある者たちばかりだ。

印象的なのは、常に問題が起こりブリュノに電話がかかってくる部分だ。そのたびにブリュノは口癖のように「なんとかする」と答える。職員たちへの給料を払うのもままならない。まさに崖っぷちの状態だ。

無認可の赤字施設に政府の監査が入る。結局のところ無認可で子供たちの支援が満足にできないからやめろということだが…。辞めた場合、施設にいる子供たちの引き取り手がいるのかとブリュノは叫ぶ。この時の監査員の表情は印象的だ。

どうしようもない現実。実際に政府は黙認したようだ。公的施設や病院ですべて面倒見れるわけでもない。職員も人間であれば、無理なものは無理なのだろう。自閉症児童の母親が、子供のころは興味をもってくれたが、成長すると誰もが見て見ぬふりをすると言っていたのが強く印象に残っている。

仕事をしてもうまくいなかない。毎日の電車通勤では思わず非常ボタンを押してしまう。そんな自閉症の男をどこまで面倒みることができるのか。誰からも見捨てられた場合は、施設に監禁され薬漬けにされてしまう。母親としても自分が死んだあとどうなるのかが不安でならない。

結局は金さえあればブリュノの施設でも十分ケアすることができるのだろう。政府が少しでも支援していれば…。エンディングでは実際のブリュノの映像が流れているが…。何か強い信念がないとできない仕事だ。

結局は何も解決はしていない。ブリュノのような者の善意に頼っているだけだ。



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