サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ


 2022.9.18     難聴になるとはどういうことか【サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
バンドのドラマーのルーベンは、長い間バンド活動で爆音にさらされていたので、突如として難聴になってしまう。難聴になるまでの音の変化が表現されている。朝起きていつものルーティーンをこなしてはいるが、突如として音が聞こえづらくなる。まるで水の中に入っているような籠った音となる。突然の難聴による混乱が伝わってくる。また、観衆にもその変化がわかる。耳が聞こえなくなるとはどういったことなのか。

ドラマーとしては死刑宣告に近いのだろう。聴覚障碍者の支援コミュニティーに参加し、一緒に生活することでルーバンは変わっていくかと思いきや…。耳にインプラントを組み込めば聞こえるようになるらしい。ただ、支援コミュニティーはそのことについて否定的ではある。なぜそのようなスタンスなのかは不明だ。

■ストーリー
ドラマーのルーベンは、恋人のルーとバンドを組み、アメリカ各地のライブハウスを回るツアー生活を送っていた。そんなある日ルーベンはひどい耳鳴りに襲われ、急速に聴力を失っていく。“音楽も人生も失ってしまう”―不安や絶望に押しつぶされそうになるルーベンだが、ルーの勧めで聴覚障がい者の支援コミュニティーに参加することに。徐々に新たな環境に適応する一方で、元の生活に戻ることを諦めきれないルーベンは葛藤する。

■感想
朝起きるといつも聞こえるはずの音が聞こえない。耳に水が入ったように音がこもって聞こえる。だんだんと相手の声が聞こえなくなる恐怖。強烈なのは薬局に行った際に、相手が話す声がほとんど聞こえないという部分だ。

人は突然難聴になるのだろうか。ドラマーという職業病なのかもしれない。相手の話す言葉が聞こえないとどうなるのか。会話は筆談で可能。ルーベン自身は話はできるが、相手の声が聞こえない。インプラントの手術は高額ですぐに金が用意できない。ルーベンが選んだのは支援コミュニティーへの参加なのだが…。

支援コミュニティー内部は厳しいようで、そうでもない。ごく普通に生活する分には何も不自由はないのだろう。手話も覚えられ、聴覚に障害をもつ子供たちとの交流もある。ただ、ドラマーのルーベンとしては恋人のボーカリストのことが忘れられない。

確かに、未来永劫施設でサポートとして働くのは我慢できないのだろう。ルーベンが選んだ道は、手術をしてドラマーとして復活することだったのだろうか。少しふに落ちないのは、支援施設の長がインプラント手術に否定的だと言う部分だ。ルーベンが自分勝手に手術したということで施設を追い出している。

自分のドラムやアンプ、トレーラーまで売り払い手術費用を捻出するルーベン。そこから、手術をするのだが…。自分がイメージしたように元通りの音は聞こえない。少し籠ったような音となるが、相手の言葉は違和感なく聞こえることができる。これこそが、聴覚障碍者が手術することへの否定的な部分なのだろう。

どこか雑音めいており、周りの生活音が頭に響く音となる。ルーベンは目の前で恋人が歌う歌声が雑音交じりに聞こえたことに絶望する。そして、インプラントの器具を外し静かな日常を取り戻す。

手術後の雑音まみれの日常は確かに辛い。



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