仕掛島 


 2023.4.26      大掛かりすぎる仕掛け 【仕掛島】

                     
仕掛島 [ 東川篤哉 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
東川篤哉の長編ミステリ。作者の作品はライトなお笑いミステリーがメインではあるが、本作は久しぶりの本格的な長編ミステリーだ。シリアスな展開を想像していたのだが…。本作でもコメディの要素が付きまとってくる。瀬戸内海の孤島・斜島で起こる奇妙な出来事。空から人が飛んできたり、海の中から人が飛び出してきたり。普通では考えられないことが巻き起こる。

必ず仕掛けがあるのはわかっていたが…。その仕掛けが思った以上にアニメ的であり、現実性がないように思えた。謎解きの要素は確かに気になるところではあるが、種を明かしても驚くことはない。そんなことはさすがにできないだろう、というトリックを示されると現実味が薄れてしまう。

■ストーリー
岡山の名士が遺した二通の遺言状。一通目の遺言に従って、一族の面々は瀬戸内の孤島・斜島に集められた。行方を晦ましていた怪しげな親族までもが別荘『御影荘』に招かれて奇妙な空気に包まれるなか、もう一通の遺言状は読みあげられた。翌朝、相続人の一人が死体となって発見される。折しも嵐によって島は外界から隔絶される事態に。相続人探しの依頼を受けていた私立探偵・小早川隆生と遺言執行人の代理を務める弁護士・矢野沙耶香、ふたりは次から次へ奇怪な事件に巻き込まれていく。

鬼面の怪人物の跳梁、消える人影、そして一族が秘密にしていた二十三年前の悲劇――続発する怪事の果て、探偵たちの眼前に驚愕の真相が現出する! 本屋大賞作家が満を持して放つ、謎解きの興趣を隅々まで凝らした長編ミステリ。

■感想
ライトでコメディチックな作品がメインの作者ではあるが、今回は本格的な長編ミステリだ。瀬戸内海の孤島で遺言を公開するため関係者が集められる。翌朝、ひとりの人物が死体として発見される。相続人のひとりが殺されたということで他の相続人の仕業かと思いきや…。

遺言状公開の場に弁護士や探偵、そして和尚までもが立ち会う展開が異質だ。嵐により外部から隔離された場所となり、誰もが身動きできない。ミステリの定番的ではある。序盤では犯人は島にいる外部の人間かと思われたのだが…。

相続人のひとりが窓の外にたたずむ赤鬼を見たと証言する。それは殺された人物の血まみれの顔だった。犯人と思われる人物は追いかけられそのまま嵐の海に飛び込んでしまう。外部の犯人は死亡したと思われたのだが…。

この手のミステリで外部犯の可能性は限りなくゼロに近い。内部の人物がどのようにして海に飛び込んで逃げたのか。中盤以降にミステリの仕掛けが小出しにされるのだが…。壮大なトリックだ。実は屋敷自体が人体の身体を模倣しており、それぞれの部屋に意味があることが判明する。

飛び出す絵本的な仕掛けは壮大すぎる。これをトリックとされると現実感がない。飛び出す絵本のようにページを開く要領で建物が即座に立ち上がるのはやりすぎだ。現実的には不可能だろう。海に飛び込む人間や海中から飛び出す人間についても、バンジージャンプのようにゴムを体につけて、ということらしいのだが…。

大掛かりな仕掛けは現実感がない。これらをトリックのメインとされると、種明かしされたとしても面白味はない。そして、驚きもない。

合間にちょっとしたコメディの要素がある程度のミステリーだ。



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