さよならの朝に約束の花をかざろう


 2022.3.27      決して歳をとらないイオルフの民【さよならの朝に約束の花をかざろう】

                     
さよならの朝に約束の花をかざろう [ 石見舞菜香 ]
評価:3

■ヒトコト感想
イオルフの民のマキアの物語だ。メザーテの国に連れ去られたイオルフの民のレイリア。マキアも巻き込まれる形となり、偶然出会った赤ん坊のエリアルを育てることになる。10代の状態で見た目の成長が止まったマキアと拾った子供であるエアリアは、エアリアが成長するにしたがって二人の関係がわからなくなる。周りから奇異の目で見られたりと、特殊な状況であることは間違いない。

このマキアのエピソードとは別にメザーテの国では他国から侵略を受けたりもする。そこでメザーテ軍に志願したエリアルも戦いに挑んでいく。イオルフの民は成長が止まるため、周りの人間たちは次々と年老いていく。そのむなしさも平行して描かれていく。ラストでは姿形の変わらないマギアの目の前には、ヨボヨボになりベッドに横になるエリアルの姿がある。

■ストーリー
縦糸は流れ行く月日。横糸は人のなりわい。人里離れた土地に住み、ヒビオルと呼ばれる布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らすイオルフの民。10代半ばで外見の成長が止まり数百年の寿命を持つ彼らは、“別れの一族"と呼ばれ、生ける伝説とされていた。両親のいないイオルフの少女マキアは、仲間に囲まれた穏やかな日々を過ごしながらも、どこかで“ひとりぼっち"を感じていた。そんな彼らの日々は、一瞬で崩れ去る。

イオルフの長寿の血を求め、レナトと呼ばれる古の獣に跨りメザーテ軍が攻め込んできたのだ。絶望と混乱の中、イオルフ一番の美女レイリアはメザーテに連れさられ、マキアが密かに想いを寄せる少年クリムは行方不明に。マキアはなんとか逃げ出したが、仲間も帰る場所も失ってしまう……。虚ろな心で暗い森をさまようマキア。そこで呼び寄せられるように出会ったのは、親を亡くしたばかりの“ひとりぼっち"の赤ん坊だった。

少年へと成長していくエリアル。時が経っても少女のままのマキア。同じ季節に、異なる時の流れ。変化する時代の中で、色合いを変えていく二人の絆――。

■感想
イオルフの民の地へ攻め入るメザーテ軍。ここで、レイリアは連れ去られメザーテ国の王の子どもを産むことを強制される。イオルフの民が長寿なので、その長寿の血を狙っている。イオルフの民は外見が特徴的で10代のまま見た目が変わらない。

レイリアの連れ去り事件に巻き込まれたマギアは、偶然森の中で母親が死に、ひとりぼっちとなった赤ん坊のエリアルを拾う。ここから、マギアとエリアルの物語がスタートする。はたから見ると、子供が子供を育てているように見える。マギアの子育て奮闘記的な雰囲気もある。

エリアルが成長していくにつれ、マギアと見た目の年齢差がなくなっていく。ここで、エリアルの反抗期と重なりふたりの関係は微妙になる。母親としてのマギアは、エリアルの感情が理解できない。周りは、エリアルとマギアが駆け落ちカップルとまで誤解してしまう。

エリアルの苦悩は想像できる。ただ、反抗期が終わり、エリアルが結婚すると関係は良好となる。このあたり、なんだかマギアがかわいそうに感じてしまった。苦労して育てても、エリアルにその思いが理解されない。

ラストは他国を侵略してきたメザーテ軍が逆に侵略されレイリアはイオルフへ逃げ帰ってしまう。残されたのは王とレイリアの間にできた娘だけだった。歳をとらないイオルフの民の寂しさが描かれている。ラストはマギアがベッドの傍らに座り、ベッドでは白髪でヨボヨボとなったエリアルが眠っている。

マギアは10代のまま変わらない。どことなく、浦島太郎的だと思えてならない。人一倍長生きするということは、それだけ親しい人との別れがあるということだ。

美しい独特な絵柄が目を引く作品だ。



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