三体2 黒暗森林 下 [ 劉 慈欣 ]
評価:4
■ヒトコト感想
強烈な展開だ。三体世界の巨大艦隊はまだやってこないが、調査船が1隻近づいている。面壁者の一部は冬眠し二百年後に目を覚ます。この二百年後にどうなっているのかが、描かれている。予想に反して二百年後は楽観論に満ちていた。技術が進歩し、二千隻もの宇宙艦隊が完成しており、三体艦隊を迎え撃つ準備はできていた。
このシリーズでは、想像もつかない展開が続いているのがすばらしい。これまでのSFではまったく描かれてこなかった新しい世界。面壁者の一人が考えた、思想を固定する仕組みは強烈だ。その仕組みを入れた瞬間に、水を毒と感じると暗示をかけられると、二度と水を飲むことができない。人類の根深い敗北主義から逃れるには頭に勝利を植え付けるしかないのだろう。
■ストーリー
三体世界の巨大艦隊は、刻一刻と太陽系に迫りつつあった。地球文明をはるかに超える技術力を持つ侵略者に対抗する最後の希望は、四人の面壁者(ウォールフェイサー)。人類を救うための秘策は、智子(ソフォン)にも覗き見ることができない、彼らの頭の中だけにある。面壁者の中でただひとり無名の男、羅輯(ルオ・ジー)が考え出した起死回生の“呪文"とは&? lt; br&/gt; 二百年後、人工冬眠から蘇生した羅輯は、かつて自分の警護を担当していた史強(シー・チアン)と再会し、激変した未来社会に驚嘆する。二千隻余から成る太陽系艦隊に、いよいよ出撃の時が近づいていた。
■感想
とてつもない作品だ。これまで映画や小説などで様々なエイリアンの地球襲来が描かれていたが、そのどれもと異なる、全く新しい論理で描かれている。三体世界に対抗するために生み出された面壁者。それぞれが独自の対抗策を描いた前作。
そこから三体世界から命を狙われ始めた羅輯の策略には、何かしら三体世界が脅威と感じる何かがあるはずだが…。二百年の冬眠から覚めた羅輯は世界の変わりように驚く。三体世界の襲来前の絶望が支配しているかと思いきや…。世界は安定していた。
この世界の安定はまやかしであることは想像できた。人類が勝手に自分たちの技術を過信し、三体世界にも勝てると思い込んでいた。確かに二千隻の宇宙船で迎え撃つ様々な準備ができているとなれば、長い移動で疲弊した三体艦隊を簡単に追い払えると思い込んでいたのだろう。
世界はすべて無線での給電になっているのにも驚いた。裕福で明るく便利な未来がそこにあった。この展開は意外だが、三体艦隊の偵察機と出会ったことですべてが崩壊する。
戦国時代の武器である弓矢や槍がどれだけ高性能になったとしても、弓矢や槍であることは変わらない。では、進化した戦国時代と現代の銃やミサイルで戦ったとしたらどうなるのか。単純な表現方法としては三体世界が銃やミサイルで、人類世界が弓矢や槍で戦うということなのだろう。
三体艦隊の偵察機の高度な文明を表現する手段がすさまじいインパクトがある。人類がわからないことだらけであるのは、そのまま三体世界の文明がすさまじく先へ行っていることなのだろう。
羅輯の面壁計画だけが唯一、三体世界に対して人類文明を人質にとる行動で対抗できると分かったのが本作のラストだ。