昨晩お会いしましょう 


 2024.6.7      男女のドロドロとした恋愛 【昨晩お会いしましょう】


                     
昨晩お会いしましょう / 田口ランディ / 幻冬舎 [文庫]
評価:3
田口ランディおすすめランキング
■ヒトコト感想
田口ランディの短編集。男女の恋愛の話。特に肉体関係を深く描き、男女の思いの違いというか、体と心の変化の違いを描いた物語。不倫相手の男と待ち合わせをしている中で、双子の若い男にナンパされる。最初は相手に対する当てつけかもしれないが、いつの間にか若い双子の男たちに夢中となる。不倫相手の男は忙しくなかなか相手をしてくれない。こんな関係は世間にごまんとあるのだろう。

本作のほぼすべての短編の女性たちはセックスに積極的だ。男からすると、ここまで積極的にこられると逆に引いてしまう場合もある。ナンパということでワンナイトであれば積極的な女性は大歓迎なのかもしれないが…。積極的な女性の物語となっている。

■ストーリー
恋愛短編集、表題の「昨晩お会いしましょう」・「深く冷たい夜」・「堕天使」・「満月」・「ウタキ夜話」の5作品。もし誰かを好きになってしまったら、苦しくても、たくさん好きになって大丈夫。たくさん好きになって、悲しい思いをしても大丈夫。憎しみや怒りは心を壊すけど、愛や悲しみで心は壊れない。そんなことを考えながらこの短編を書いてみました。いま、好きな人、いますか?

■感想
「深く冷たい夜」は強烈な作品だ。義父から受けた性的虐待のトラウマを抱え、夢の中でその義父を殺し死体を埋める。この義父を殺害した描写が真実なのか夢なのかは最後まで語られない。母親は交通事故で突然死する。

そんな母親の霊にとりつかれた女は、すべてを振り払うように男たちと寝続ける。恐ろしくなる。自分で自分のことを病的に性的な傾向があることを理解している。義父からの性的虐待のトラウマなのか、それとお母親の影響なのか。。。恐ろしくなる作品であることは間違いない。

「堕天使」は、産婦人科医がインターネットで人妻と不倫しつつ、堕胎という行為に嫌悪感を抱く作品だ。本作では堕胎について詳細に描かれている。自分はほとんどそのあたりの知識がなかったので驚くことの連続だ。

まだ人間の形をしていない胎児の頭をつぶして引っ張りだす。想像するとかなり残酷な行為に思えてくる。自分が引っ張り出されることを察知してなのか、おなかの中で逃げ回る胎児。主人公の産婦人科医は不倫相手の人妻の堕胎ができずに困惑する物語だ。

「満月」は強烈だ。恋人に別れを告げられるが、恋人の足にしがみつき別れないと叫ぶ女。周りで人々が見つめる中でも、「バカみたい」と見物人に言われたとしても止めることができない。ひたすら傷つけられたとしても、止めることができない。

傷ついても、もっと傷つくことで自分の存在意義を示そうとしているように思えてきた。世の中には、こんな女性もいるのかもしれない。傷つくだけでは終わらない。ひたすらダメな男と付き合い続けるような女性の心境なのかもしれない。

濃密な性的描写の連続だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp