竜とそばかすの姫 


 2022.6.6      言うなればネット弁慶のような感じか? 【竜とそばかすの姫】

                     
竜とそばかすの姫 (角川つばさ文庫) [ 細田守 ]
評価:2.5
■ヒトコト感想
映画の原作小説。映画監督が自分の作品を小説化したということなのだが…。やはり映像ありきの作品だと感じた。仮想世界でのアバターたちの映像を文章で表現するのは難しいのだろう。映像のすばらしさが注目された作品というのもあるのだろう。その映像の魅力が伝わってこなかった。現実世界で心を閉ざしたすず。仮想の世界と現実ではまるで別人となるのは昔からあるパターンだ。

現実世界では冴えない女の子が仮想世界では有名な歌姫となる。仮想世界での竜は何者なのか。竜の正体をめぐる争いと、現実世界でのすずのちょっとしたドタバタが描かれている。SNSがあたりまえの現在では、SNSによりネット上の人物が特定される可能性がある。そのあたりが濃密に描かれている。

■ストーリー
高知の田舎町で父と暮らす17歳の高校生・すずは、幼い頃に母を事故で亡くし、現実世界では心を閉ざしていた。ある日、親友に誘われたことをきっかけに“もうひとつの現実”と呼ばれるインターネット上の超巨大仮想空間〈U〉に「ベル」というアバターで参加することに。ずっと秘めてきた比類なき歌声で瞬く間に世界中から注目される歌姫となったすず(ベル)は、〈U〉の中で「竜」と呼ばれ恐れられている謎の存在に出逢う。凶暴ながらもどこか孤独な竜との出逢いをきっかけに、すずは自分の中にある迷いや弱さと向き合っていく――。歌が導く奇跡の出会いと成長の物語!

■感想
高校生すずがネットデビューする。現実世界でパッとしない女の子が仮想世界でそばかすの姫として注目される。仮想と現実の区別が本作のメインだろう。仮想世界の中で竜が登場し、大暴れする。竜の正体を探るというのが本作のメインだろう。

ネット上では竜の正体を見つけるためにあらゆる手段が講じられている。すずはベルとして仮想世界に参加し、仮想世界に自分の生きがいを求めているような形となっている。竜とベルとの交流もあり、そこから大きく変化していく。

すずには現実世界でのちょっとした恋愛模様もある。自分に自信がもてないすずが、女性から大人気の幼馴染に対する思いに困惑する。ありがちな展開かもしれない。自分はそばかすだらけで可愛くないのでダメだと思い込んでいる女の子が、実はモテていた。

すずの他にもモテ女子のルカちゃんなどが存在し、恋愛模様を複雑化している。この手の作品だとすずの周辺にいる男の誰かが実は竜だったというオチが思い付くのだが…。仮想世界では他者を圧倒する強さを誇る竜の現実世界での弱さが見えてくることになる。

映画版では、ベルの歌声のすばらしさと映像のキレイさにインパクトがある作品だと聞いていた。自分はまだ見ていないので、想像でしかないのだが…。仮想世界で圧倒的なベルの歌声のすばらしさと竜の強さの描写はどのように描かれていたのか。

文章だけではそのすごさが伝わってこなかった。ストーリーとしてはありきたりなため、小説としては普通でしかない。ベルと竜との関係と、現実世界がどのようにリンクしていくのか。現実世界で弱く虐げられた者が竜の正体というのは想像ができたのだが…。

映画版を見てみたいのは確かだ。



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