レインメーカー 


 2022.11.9      母子手帳の存在さえ知らない父親 【レインメーカー】

                     
レインメーカー [ 真山仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
医療過誤を厚かった作品。序盤からそれぞれの登場人物の立ち位置が描かれている。望まない訴訟で優秀な医者の人生を台無しにしてしまった弁護士の雨守。そんな雨守が、医療過誤で訴えられた病院と医者を救う。子供が熱をだした際にどのような対応をすべきなのか。非常に親の立場からすると身につまされる思いがする。母親がいないと何もわからない父親。

病院へ行く際に子供の母子手帳を必ず持参しなければならないというのは意識がない。そして、どんな予防接種をうけてきたのかが重要らしい。幼い子供を失った夫婦は、何かをよりどころに生きるしかない。それは、たとえ間違っていたとしても病院を訴えるという手段をとるしかないのだろう。

■ストーリー
「法律を知らないと不幸になる」と医師の側に立ち、法律問題や医療過誤訴訟を闘っている異能の弁護士・雨守誠に、ある日総合病院から依頼が入った。急死した2歳児の両親に医療過誤で訴えられそうで、病院と医師を弁護してほしいというのだ。救えなかったら医師が悪いのか?――自身の信念に基づき、雨守は医療現場の矛盾や不条理に斬り込んでいく……。弁護士の執念を描き切る法廷サスペンス。

■感想
医療過誤の訴訟というのは大きな話題となる。幼い子供が病気となり、病院側の不手際がなければ助かっていたとなるとなおさらそう思ってしまうのだろう。雨守は過去に罪のない医者に対して訴訟を起こし、優秀な医者を自殺に追い込んでしまった。

そんな思いから罪のない医者を医療過誤の裁判から守るために動き出す。序盤はそれぞれの登場人物の立場が描かれている。仕事が忙しく子供を夫に任せて海外出張に行く母親。夫の方は会社がつぶれるか否かの瀬戸際なので、遅くまで必死に仕事をし続ける。

様々な要因が重なったことにより、不幸にも幼い子供が亡くなってしまう。それはどこに原因があったのか。母親は自分が海外出張に行かなければよかったと自分を責める。父親は子供を病院へ連れていく際の常識を知らず戸惑わせていた。

このあたり、自分も同じような感じだと思えた。母子手帳がなく、それまで子供がどんな予防接種を受けてきたのかを把握していない。そして、子供がどんな様子だったかも答えられない。祖母が子供を迎えに行ったのだが、すぐに病院へと連れて行かなかったことが手遅れの原因となっている。

医者がどれだけ懸命に治療に専念したとしても助からない命もある。それらを裁判で決めるというのはなんだか困惑してくる。家族からすると、もしかしたら子供が助かったのかもしれない、という思いがある。冷静に考えると自分の責任で子供が死んだということになると心は辛い。

医師としては自分の正当性をアピールするしかない。弁護士が自分の成果をアピールするために無駄に訴訟に踏み切る場合もある。なんだか、それらに翻弄される家族や医師たちが哀れで仕方がない。

強烈なインパクトのある医療過誤訴訟作品だ。



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