ラーゲルより愛を込めて


 2024.2.16    理不尽極まりない強制労働【ラーゲルより愛を込めて】


                     
ラーゲリより愛を込めて [ 瀬々敬久 ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
戦後のシベリアでの強制収容所の過酷さを描いた作品。過酷な強制労働の中で、決して希望を捨てない一人の男がいた。山本は自暴自棄になりがちな仲間を励まし続けた。序盤で捕虜となり、そこからひたすらシベリアでの強制労働が続く。最も強烈なのは、シベリアから日本に戻れるということで、皆で電車に乗っている場面だ。そこで電車が停止し、呼ばれた者たちだけが電車から降ろされる。

実はそこは戦争犯罪者を強制収容所に入れるためだった。山本はいつの間にか戦争犯罪者にされていた。その後、元上司や上官が収容所でリンチにあったりと強烈な現実が描かれている。戦争が終わり日本に帰れるのか。山本はガンとなり日本に帰ることができず、山本の遺言すらもスパイ容疑でロシアに奪われてしまう。。。

■ストーリー
第二次世界大戦終了後、60万人を超える日本人がシベリアの強制収容所(ラーゲリ)に不当に抑留され捕虜となった。あまりにも残酷な日々に誰もが絶望する中、ただ一人、生きることへの希望を捨てなかった人物、それが山本幡男である。劣悪な環境に死に逝く者や自ら命を絶つ者も絶えない中、山本は生きることへの希望を強く唱え続け、仲間たちを励まし続けた…。ラーゲリで一筋の希望の光であった山本幡男の壮絶な半生を映画化。

■感想
戦争が終わった後にも数十万人の日本人がシベリアで強制労働していたことに驚いた。本作の主人公の山本もいわれのない戦争犯罪を押し付けられ長期間シベリアで強制労働を行っていた。強烈なのは、形だけの裁判で25年もの長期間、強制労働を行うことが決まった場面だ。

山本以外にも軍隊の上官であった者や、軍曹なども戦争犯罪者とされていた。それぞれは主体的に戦争にかかわってきたわけではない。ただ、上官の命令で動いていただけ。これこそが戦争の悲惨な状況という感じだ。

山本と離れ離れとなり日本に帰り着いた山本の家族たち。山本が生きていると信じており、妻は山本の帰りをあきらめていない。山本がどこで何をしているのかわからない状態で、4人もの子供たちを育てながらシングルマザーとして頑張るのは相当に大変なことなのだろう。

数年後に山本からの手紙が届き、そこで初めて山本が生きていると知る。シベリアで強制労働する山本も大変だが、日本で待ち続ける家族たちの大変さもすさまじいものがあるのだろう。

山本は日本に帰られる希望がないままガンで死んでしまう。それまで山本に助けられてきた者たちが一致団結して山本の遺言を守ろうとする。スパイ容疑で山本が書いた遺言が、ロシア兵士たちに奪われてしまう。

山本の遺言を暗記した仲間たちが、最後に山本の家族に遺言を伝えに行く。シベリアの過酷さは理不尽でしかない。人間的な生活はなく、日本に帰る希望がない状態であれば死にたくなるのは当然なのだろう。そんな状態の中で、希望を失わない山本は強い胆力の持ち主だ。

強烈な感動を引き起こす作品だ。



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