2022.10.26 世界の富の仕組みと似ている【プラットフォーム】
プラットフォーム [ イバン・マサゲ ]
評価:3
■ヒトコト感想
0階には豪華な食事が用意され、それが1階下がるごとに2人の人間に食べられ、下層階の人々には食べ物がいきわたらない。本来、皆が最低限自分が生きるためだけの食べ物を食べれば、下の階にも食べ物はいきわたるはずなのだが…。まさに今の世界を描いているような作品だ。富を一部の人が独り占めするので、下の階層に富がいきわたらない。皆が平等に最低限の富を手にすれば、最下層の人々も生きながらえることができる。
ルールを守らせようとこのシステムに参加した者は、結局、みんなにルールを守らせることができないことを理解し、絶望し自殺する。結局は解決策はない。ラストはなんらかこの仕組みに対する抗議を示すことで終わっている。
■ストーリー
その“穴"は世界を変えるある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が"プラットフォーム"と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる…1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた!果たして、彼は生きてここから出られるのか! ?
■感想
最初は仕組みの説明から入る。穴があり、上階から定期的に食事が下りてくる。この食事は明らかに食べ散らかされた残飯だ。ただ、それを喜々として食べる老人。主役のゴレンはまずこの奇妙な世界の仕組みの説明を受けることになる。
最初は降りてくる残飯を食べることに抵抗を覚えるゴレンだが、生きるために仕方なく食べ始める。下層階であればこの残飯がすべてなくなっている。そして、本作で強烈なのは、1ヶ月程度で勝手に階層を移動させられ、次に自分がどこの階層に移されるかわからないことだ。
100層以下には残飯が残ることはない。水だけで生活し続けなければならない。そして、1ヶ月持ちこたえたとしても、次にどの階層になるかわからない。となると人はどうなるのか。絶望で穴に飛び込んで自殺する者もいれば、同居者を殺して肉を食べる者もいる。
厳格なルールがあり、食べ物を持ち込んで保存することができない。もはや生きるためのサバイバル生活という感じになる。ゴレンともう一人の男は、この仕組みを作った者に抗議するため、パンナコッタを最下層まで手を付けづに持ち込むという手段を考えるのだが…。
最下層まで下りていく場面は強烈だ。50層以下には食べ物を少しづつ与えるのだが…。狂気となり攻撃してくる者もいる。ボロボロの状態で250層を超えて降りていくのだが…。後半はほぼすべての人々が死んでいる。殺されたりもあるのだが、何者かに食べられたりもしている。
悲惨な状況を超えると、最下層にはひとりの子供がいた。この子供に守り続けてきたパンナコッタを渡してしまう。そして、この子供が元気に生きていることが仕組みを作った者への抗議として、子供を上層階へ送り出そうとする。
現在の世界の富の仕組みを描いているようで、恐ろしくなる。
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