ペッパーズ・ゴースト 


 2022.11.1      ちょっとした未来が見える能力 【ペッパーズ・ゴースト】

                     
ペッパーズ・ゴースト [ 伊坂幸太郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
これこそまさに伊坂幸太郎作品の真骨頂といえるだろう。まるで風邪のウィルスが感染するように相手の飛沫を吸い込むと、相手が経験するはずの少し先の未来が見える男、壇先生。壇本人はそのことを先行上映と呼んでいるのだが…。猫を虐待する動画をSNSにアップしている者たちを懲らしめるためになぞのロシアンブルーとアメショーと呼び合う二人組がいる。

テロを起こそうとする組織。それらが入り交じり、壇が先行上映を見ることで次に何が起きるかを想像し、それを防ごうとする。テロでの爆破事件を未然に防ぐことができるのか。先行上映は一部を少しだけ見ることができるので、情報を誤って読み取る可能性がある。伊坂作品らしい展開とキャラクターたちだ。

■ストーリー
少しだけ不思議な力を持つ、中学校の国語教師・檀(だん)と、女子生徒の書いている風変わりな小説原稿。生徒の些細な校則違反をきっかけに、檀先生は思わぬ出来事に巻き込まれていく。伊坂作品の魅力が惜しげもなくすべて詰めこまれた、作家生活20年超の集大成!

■感想
ごく普通の中学教師が、生徒のひとりが新幹線の事故にあうことを先行上映で察知する。そのことをさりげなく占い師によると、という言い方で生徒に告げたところ…。本当に新幹線で事故が起き、生徒は時間をずらしていたので助かった。

このことをきっかけとして政府のテロ対策の担当者であり生徒の父親である男からテロを事前に知っていたのでは?と怪しまれることになる。それとは別に猫を虐待しSNS上に動画をUPしている者たちを懲らしめる二人の男がいた。

ロシアンブルーとアメショーというふざけた名前のふたりだ。このキャラがまさに伊坂幸太郎作品独特の雰囲気をかもしだしている。

過去にカフェでテロが発生し、そこで死亡した被害者の関係者が集まるサークルがある。そのサークルになぜか関わることになる壇。ここから、そのサークルが実は大規模なテロを計画しており、さらにはある復讐を企てていることに気づく壇。

先行上映の能力を知られていない状態のため、壇は巧みにサークルメンバーへ近づき先行上映の情報を得る。そこから、どのようにして変化してくのか。先行上映では、明日、あるクリニックで大規模なテロ事件が起きる。それを防ぐために壇と、なぜかロシアンブルーとアメショーたちが奮闘することになる。

ロシアンブルーたちが飄々と目的を達成しようとするのが良い。事態の深刻さをそれほど感じさせない軽い感じ。これこそが、伊坂作品にしか登場しないキャラクターたちだろう。ロシアンブルーたちの目的は壇とは異なるのだが、それでも同じターゲットを探すということで動き出す。

次の先行上映では野球場で強打者がホームランを打ったタイミングで、射殺事件が起きる。これを防ぐために…。先行上映というのが、本当にちょっとした未来というのがポイントなのだろう。

伊坂作品が好きな人にはたまらないかもしれない。



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