オーバー・フェンス


 2022.7.26     まるで刑務所のような職業訓練所【オーバー・フェンス】

                     
オーバー・フェンス
評価:3

■ヒトコト感想
職業訓練所には様々な人がいる。いろいろと事情を抱えて職業訓練所にいるのだろう。パッと見はまるで刑務所の中のような環境に思えた。ごく普通の中年男が生活に疲れ、大工を目指しているわけでもないのに職業訓練所に通う。キャバクラの女と知り合いとなり仲良くなるのだが…。まずこのキャバクラの女が強烈にエキセントリックだ。

ちょっとしたことでヒステリックに叫びだす。男が元嫁に会いに行っただけで激しく取り乱したりもする。終始男が何かに疲れたように、普通を求めるのがポイントかもしれない。それぞれ事情を抱えた男たち。ラストではソフトボール大会で楽しそうにはしゃぐ姿が妙に印象に残っている。そこだけ別世界のように感じられてしまった。

■ストーリー
人生に疲れた(それは勘違いかもしれないのだが)中年男が、故郷で無為に過ごす日々。彼は言う「ふつうに暮らしてきた。」しかし、その生活に疲れ、只々時間を費やす日々のその中で出会った女。「私、ぶっ壊れてる。」彼女は鳥の求愛のさまを踊って見せる。まるで童女のような佇まい。

■感想
職業訓練所というのはどのような人が通う場所なのか。どこか世間になじむことのできない、はぐれ者たちのような印象だ。見方を変えると、刑務所の内部の仕事風景に見えなくもない。人とコミュニケーションがとれず、突然暴れだす男。

失業手当がほしいからと通い続けるキャバクラの店長になる男。ヤクザ崩れや、孫がいるような高齢者、まじめに働こうとする若者まで。それぞれ事情があるというのが伝わってくる面々だ。そんな中で主人公の中年男だけは人生に疲れたような表情をしている。

キャバクラの女と知り合いになる男。明らかに何か普通ではない雰囲気を醸し出している。ちょっとしたことでヒステリックに騒ぎ出す。男が嫁と別れた原因を執拗に聞きたがり、男が話さないと怒りを爆発させる。その怒り方がすさまじい。

何が地雷になるかわからない、まさに近づきたくない女の典型だ。それでいて精神が落ち着いていると良い女ではある。男がソフトボールの試合があるから来てくれというと、喜んで来たりもする。怒りで家の窓にモノを投げて割るなんてのはあきらかに異常だ。

みなそれぞれ事情を抱えながら職業訓練所に通っている。中年男を含め、本当はみんな普通に生活するはずだった。職業訓練所の扱いがどんなものかわからない。ただ、世間のはぐれものという印象はぬぐえない。教官もそれを理解しているのか、生徒に対してのあたりは強い。

みな大工になるわけでもないのに、大工の勉強をしている。中年男が、普通が良かったというのをしきりに口ずさんでいる。妻と別れ、何の楽しみもない日常を過ごす。確かに人生に目標がもてない状態は辛いのだろう。

職業訓練所に通う者たちの悲喜こもごもが描かれている。



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