オラ!メヒコ / 田口ランディ, AKIRA / 角川書店 [文庫]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
田口ランディの旅エッセイ?今回はメキシコの旅が描かれるのかと思いきや…。思いのほかスピリチュアルな世界が全開となっている。もともと作者の作品はスピリチュアルな部分が多い印象だった。他の旅エッセイと同様に面白おかしい旅エッセイかと思いきや、そうはならない。メキシコの風土や食事や人々を描くのはほんのわずかしかない。
メインはマジックマッシュルームを食べてシャーマンの指示の元にトリップする部分が描かれている。実の兄が悲惨な死に方をした作者。両親を亡くした同行者のアキラ。それぞれが悩みを抱えながらシャーマンに助けを求める。ちょっと異色な旅エッセイとなっている。かなり昔の作品なので、今はメキシコでもマジックマッシュルームは禁止されているかもしれない。
■ストーリー
メキシコのシャーマンに伝わる幻覚キノコによるセッション。田口ランディがガイド役のAKIRAと共にメキシコを歩く。死者の祭り。フリーダ・カーロ。そこは聖霊たちの夢の土地だった。
■感想
田口ランディとガイド役のアキラ。二人のメキシコでのエッセイが描かれている。序盤はメキシコへ行くことになった経緯が描かれている。それぞれが悩みを抱えており、スピリチュアルな体験をしたいからとメキシコへ向かう。
それなりに面白アクシデントがあるのだが、それはメインではない。タコスやメキシコ人の特性なども描きつつも、メキシコの旅を楽しんでいる。メキシコ人とのダンスや、楽しい食事。ラテン系のノリというのは作者のノリにも合うのかもしれない。
そもそもがアキラがメキシコでマジックマッシュルームでトリップした経験が物語のポイントとなっている。様々なことがあり苦しんでいた時期にメキシコを旅してきたアキラ。戻ってくると人が変わったようにすっきりとした表情で帰ってきた。
田口ランディは、同じようにメキシコでトリップ体験をするためにメキシコへ向かう。ただ、単純にマジックマッシュルームを食べるだけではダメらしい。素人が手を出すと悪い影響がでてしまうようだ。ちゃんとしたシャーマンの元でのトリップ体験が描かれている。
作者の他の作品であれば「ひかりのあめふる屋久島」での体験に近いかもしれない。作者は様々な経験をしてきたので、そのあたりのスピリチュアルな体験に敏感になっているのかもしれない。マジックマッシュルームでのトリップ体験。
自分の前世だとか、自分の家族や兄のことについて、何かしら救いを求めているのかもしれない。スピリチュアルな体験を通して、自分が救われるのなら良いのだろう。これを他者にすすめ始めると、何か壺のようなものを売り始めるのかもしれない。
ちょっと変わったメキシコ旅エッセイだ。