丘の上の本屋さん [ レモ・ジローネ ]
評価:3
■ヒトコト感想
イタリアの田舎町の小さな本屋の物語。本屋といっても古書店なので本を売りに来る人もいる。アフリカ系の少年であるエシエンと店主の交流の物語がメインとなっており、古書店にやってくる人々がスパイスとなっている。店主リベロは落ち着いた語り口でエシエンに本の魅力を語る。他にも頻繁に店にやってくるウェイターの男や近所の若い女など、多種多様だ。
古本を売りに来る者も、掘り出し物を見つけたと嬉しそうに店主に報告したりもする。他にもこだわりのありそうな客や、マウントをとりたいだけの客などもいる。それらに対して店主は豊富な本の知識で対応している。何か大きな出来事があるわけではなく、終始落ち着てた展開の物語だ。
■ストーリー
イタリアの風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上の小さな古書店。店主リベロは、ある日、店の外で本を眺める移民の少年エシエンに声を掛け、好奇心旺盛なエシエンを気に入ってコミックから長編大作まで次々と店の本を貸し与えていく。リベロが語る読書の素晴らしさに熱心に耳を傾けるエシエン。感想を語り合ううちに、いつしか2人は友情で結ばれていく…。
■感想
小さな古書店は、近所の顔なじみしか来ないのだろう。そんな店に見慣れないアフリカ系の少年がやってきた。本に興味があるのだが、買うことができない。そんな少年に対して店主は本を貸して読むことをすすめる。
店主がすすめるのは古典の名作ばかり。返しにきた少年に対して必ず本の感想を聞く。少年と店主の交流というのは、まさに「ニューシネマパラダイス」のような交流かもしれない。古き良き作品を少年と共に店主が感想を言い合うのが見どころだろう。
カフェのウェイターは頻繁に古書店にやってくる。特に本を買うわけでもなく、ただ店主と雑談をするだけ。この古書店に狙っている若い女の子が来るので、毎回その子をデートに誘っている。なかなかうまくいかず、女の子の方が思わせぶりな態度をしているというのもあるのかもしれない。
女の子がほしがっていたコミックスをウェイターの男は手に入れ、それをあげる代わりにデートをしてくれとお願いしたりもする。ネットで手に入れたということだが…。今の時代、古書店で買う意味があまりないのかもしれない。
ラストは定番というべきか、この手の作品のありがちな流れとなる。エシエンは店主との交流を続け、多数の素晴らしい本と出合う。店主はもっとエシエンに本をすすめたかったのだが…。店主は時間切れとなってしまう。穏やかな生活をつづけた店主。
やはり高齢なので、先は見えていた。ウェイターや若い女の子などが、頻繁に古書店にやってきていたのも、もしかしたらそのあたりを察知していたのかもしれない。ラストで少し感動させるような流れとなっている。
ゆっくりとした時間が流れる作品だ。