ニトラム/NITRAM [ ジャスティン・カーゼル ]
評価:3
■ヒトコト感想
実際に起きた銃乱射事件の犯人であるニトラムを描いた作品。今でいうところの発達障害とでもいうのだろうか。ぱっと見は正常であり、会話もできるが、少しするとニトラムがおかしいことに気づく。一般社会での生活はギリギリできているという感じだ。ヘレンという資産家の高齢女性との出会いや、家族との関係。父親の死が大きな影響となったのだろう。
序盤からニトラムの危なっかしさが際立っている。突然切れるのは当然として、衝撃なのは、車を運転しているヘレンのハンドルを冗談なのだろうが急に動かして車をふらふらさせるという行為だ。事故に直結する危険な行為をなんでもなくやってしまう。ニトラムの危うさが際立つ行為だ。
■ストーリー
1990年代半ばのオーストラリア、タスマニア島。観光しか主な産業のない閉鎖的なコミュニティで、母と父と暮らす青年。小さなころから周囲になじめず孤立し、同級生からは名前を逆さ読みした「NITRAM(ニトラム)」という蔑称で呼ばれ、バカにされてきた。何ひとつうまくいかず、思い通りにならない人生を送る彼は、サーフボードを買うために始めた芝刈りの訪問営業の仕事で、ヘレンという女性と出会い、恋に落ちる。しかし、ヘレンとの関係は悲劇的な結末を迎えてしまう。そのことをきっかけに、彼の孤独感や怒りは増大し、精神は大きく狂っていく。
■感想
父親と母親と3人暮らしのニトラム。閉鎖的なコミュニティで両親との関係もよくない。ニトラムが普通ではないため、母親と父親は苦労している。まともな仕事に就けないため、近所の家を訪問して芝刈りの仕事がないかと尋ねて回る。
同年代の若者たちからは見向きもされない。酒場ではバカにされたりもする。発達障害の気があるニトラム。突然ストレスが爆発し怒り出して周りの物に八つ当たりをしたりもする。なまけ癖がついた父親を殴打したり。それを覚めた目で見る母親の表情が恐ろしすぎる。
資産家の熟女であるヘレンと出会うニトラム。ヘレンはニトラムのことを気に入り家に住まわせたりもする。車を買い与えたりと、どこか若い燕のような扱いをしている。ニトラムの頭が弱いというのを理解しながらペットのような扱いなのだろうか。
ヘレンとニトラムの両親が会食する場面は強烈な緊迫感がある。ヘレンに対してニトラムの母親が確認する場面はすさまじい。ニトラムはヘレンにとって息子なのか夫なのか。ヘレンが最終的にニトラムのいたずらにより死亡するのはあまりにも悲劇すぎる。
ヘレンが死んだあと、ニトラムはヘレンの金を使って銃を集め始める。ニトラムは直接的に何か恨みがあるわけではないのだろう。元から銃を撃ちたいという強い願望があり、それが爆発した感じなのだろう。
ニトラムが普通ではないことを理解しながら、銃を売る側はニトラムが大金を持っていることを知ると、次々とおすすめのライフルなどを売り込んでいる。ニトラムの異常さよりも、周りの無関心さの方が強烈なインパクトがある。ニトラムが事件を起こしたその瞬間、母親は何も知らずに海岸を眺めていた。。。
起きるべくして起きた悲劇だ。