にじいろガーデン 


 2024.8.18      レズビアンカップルの複雑な事情 【にじいろガーデン】


                     
にじいろガーデン (集英社文庫(日本)) [ 小川糸 ]
評価:3
小川糸おすすめランキング
■ヒトコト感想
レズビアン夫婦と家族の物語。泉は夫との関係に悩み、女子高生と知り合う。ここで二人が恋愛関係となり一緒に駆け落ちすることになる。泉には子供がおり、女子高生の千代子は泉と知り合う前に男と付き合い妊娠していた。非常に複雑な家族関係だ。泉と千代子、小さな男の子と千代子の生まれたばかりの小さな子。そんな状態で田舎の村に引っ越して暮らす。

田舎であればふたりの関係はより目立つことになるだろう。平穏に暮らしたいのであれば都会で暮らすのが一番楽なのだが…。小川糸作品でよく登場する田舎での自然に囲まれた描写が続いていく。ふたちはゲストハウスを運営して幸せな生活を続けるのだが…。レズビアン夫婦の物語だ。

■ストーリー
夫との関係に苦しむ泉はある日、電車のホームで思い悩む女子高生と知り合う。互いの悩みを相談するうち二人は惹かれ合い、共に暮らす決意をする──。新たな家族の形と幸せを問う感動長編。

■感想
夫と離婚し女子高生の千代子と駆け落ちする泉。千代子の両親から激怒されるのは当然のことだろう。子供がレズビアンだということを素直に受け入れることができる人は少ないだろう。どれだけLGBTQが声高に叫ばれようとも、マイノリティが大手を振って自分の性向をカミングアウトするのは難しい。

周りにしても頭では理解はしているが、やはり奇異の目でみてしまうのは当然だろう。泉たちが引っ越してきた当初に、近所のボスから嫌がらせをされる。それを笑顔でやり過ごすことができる胆力が必要だ。

泉の実の息子の草介と千代子の娘の宝がいる。複雑な家庭環境にあるが、ふたりはすくすくと成長する。作中でも泉たちは子供たちが学校でいじめられないかを心配していた。田舎であれば特殊な家庭の話はすぐに広まるだろう。

その心配もあるが、成長し自分の家族が普通ではないと気づいたとき、どのように感じるのか。泉をカカと呼び千代子をママと呼ぶ。その生活が当たり前になれば子供たちも何も思わないのだろうが…。複雑な家庭なだけに普通ではない問題が様々発生する。

家族の中で千代子がガンだと判明する。家族のひとりが欠けることの影響は普通にあるのだろうが、レズビアンの夫婦もそれは変わらない。物語として、泉と千代子の関係というのは、男からすると少し想像できない。

衝撃なのは草介が実は千代子のことが好きだった部分だ。泉という母親がおり、そのパートナーである千代子に恋をする草介。かなわぬ恋に悩み、千代子がガンで死んだあとに、後を追をうとする。少しもハッピーエンドではない物語だ。

作者の作品にしては異質な物語だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp