百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫) [ 中田永一 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
甘酸っぱい気持ちになる恋愛小説。表題作でもある「百瀬、こっちを向いて」は、イケメンの先輩の浮気を隠すために、浮気相手である百瀬と付き合うことになった僕の物語だ。スクールカーストでは下位にいる僕が突然百瀬と恋人関係にあると周りには見えてしまう。イケメンの先輩だけが良い思いをしている。
ただ、僕からしても、普通にしていたら関わることのない女性と付き合うふりをする。このまま終わるのはかなり悲しすぎるので、オチとしては実は百瀬が僕のことを好きだった?なんてことを期待してしまったのだが…。非常に僕の立場を考えるとみじめになってくる。イケメンの先輩が憎らしくなり、百瀬の健気な姿はちょっと悲しくもなる。
■ストーリー
「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった……!」 恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。
■感想
切ない感じが強烈なインパクトのある作品ばかりだ。「百瀬、こっちを向いて」は先輩を助けるために、先輩の浮気相手と付き合ったふりをするというのが強烈に切ない。陰キャとして学校で静かに過ごしていた男が、突然、小柄な美少女と付き合うふりをする。
周りの生徒たちが驚くのは当然として、本人も戸惑うのだが…。百瀬の積極性が僕の心を迷わせる。恋愛経験のない少年にとって、積極的な美少女はそれだけでイチコロになるのは当然だろう。最後まで百瀬が振り向いてくれないのは辛い。
「小梅が通る」はなんだかキュンキュンしてくる。見た目が美しい柚木は、その見た目で注目を浴びることを避けるため普段は不細工メイクをして陰キャなふりをしている。そこにクラスのお調子者である男に素顔を見られ、とっさの機転で妹の小梅ということで押し通している。
男は小梅にもう一度会いたいがために柚木に近づいてくるのだが…。美しい見た目のために周りから注目されるのはわかる。それが行き過ぎると同性からも嫌われ、何も良いことがないというのは究極の状態かもしれない。
同性からは嫌われ、異性からは見た目だけで注目されてしまう。中身を見てもらえない悲しさが描かれているのだが…。ある程度定番かもしれないがキュンキュンした。男は最初は小梅に一目ぼれをしていたのだが…。不細工な柚木と男の掛け合いが良い。
そして、見た目で近づいたわけではない男は、最終的には小梅ではなく柚木を選ぶことになる。この後の展開を想像するとニヤニヤが止まらない。柚木が素顔になると男はどんな反応を見せるのか。描かれてはいないが想像してしまった。
どれもが陰キャが関わっている。