MINAMATA-ミナマタ-


 2023.11.1    水俣病はまだ終わっていない【MINAMATA-ミナマタ-】

                     
MINAMATA-ミナマター [ ジョニー・デップ ]
評価:3

■ヒトコト感想
水俣病についての写真を撮り世界へその事実を知らしめたユージン・スミスを描いた作品。ジョニーデップがスミスを演じ、脇を固める日本人たちは有名俳優ばかり。ハリウッドが作成した日本をテーマとした作品によくある変な日本像はまったくない、正当な日本を描いた作品だ。水俣病については教科書などにも載っているので同じみなのだが、外国人であるスミスが入り込むことで、より企業側の対応も変わってくるのだろう。

工場側が様々な圧力をかけるのだが、それらを弾き飛ばして最後には素晴らしい写真を撮っている。エンディングで現在の水俣病患者の状況が描かれているのだが、いまだに苦しんでいる人がいることに驚いた。もはや終わった病気かと思っていたのだが…。

■ストーリー
1971年、ニューヨーク。アメリカを代表する写真家の一人と称えられたユージン・スミスは、今では酒に溺れ荒んだ生活を送っていた。そんな時、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと頼まれる。水銀に冒され歩くことも話すことも出来ない子供たち、激化する抗議運動、それを力で押さえつける工場側。そんな光景に驚きながらも冷静にシャッターを切り続けるユージンだったが、ある事がきっかけで自身も危険な反撃にあう。追い詰められたユージンは、水俣病と共に生きる人々にある提案をし、彼自身の人生と世界を変える写真を撮る──。

■感想
酒浸りで落ちぶれた写真家という扱いのスミス。それが水俣病の現実を見て写真を撮ることを決意し日本へ渡る。簡単に言うと、スミスが水俣病に苦しむ現状の写真を撮る物語だ。工場側と漁師や水俣病に感染した地元民たちの争いを目の当たりにするスミス。

工場側が早くからその危険性に気づいていながら隠蔽していたことは衝撃だ。スミスが写真を撮りLIFEに掲載されることで、話題は世界的になり政府や工場側は対応せずにはいられなくなる。スミスがきっかけのひとつであることは間違いない。

スミスを危険視し工場側の社長がスミスを賠償しようとする場面は強烈だ。浄化装置の前にきれいな水をコップに入れて飲むポスターがある。これはそのまま、今の原発の処理水が安全という政府の言い方とまったく同じことに驚いた。

海の広さからすると微々たる量であるので、それは影響がない、というスタンスを続ける工場側。スミスは大金に一瞬目がくらむのだが…。スミスが反発すると、工場側は実力行使にでる。警察を使った妨害や、チンピラに放火させてフィルムを焼き尽くすなど、無茶苦茶な状況だ。

水俣病の被害者は痛々しい。わかっていたことだが、映像として見せられると強烈なインパクトがある。スミスが撮った写真は確かに強烈だ。こんな写真と特集が世界に広まった場合は、工場側へのバッシングは強烈なものとなるのは間違いない。

エンディングで水俣病やスミスがどのような状況にあったかが語られている。工場側との激しい暴動に巻き込まれスミスは怪我をし、その怪我が原因で死ぬというのは強烈だ。スミスの人生と水俣病に苦しむ人々を変えたことには変わりない。

強烈な作品だ。



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