ミッドナイト・コール / 田口ランディ
評価:3
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■ヒトコト感想
男女の関係を描いた短編集。主人公は自分に自信がもてない女性。どの作品も幸せ満点というわけではないが、妙な強さや明るさがある。作者のエッセイを読んでいると、男女関係の考え方がよくわかるが、それが如実に表現されているような気がした。恋愛ベタな女、自分に素直になれない女、どこか孤独な男に惹かれる女、何かにもがいている女。
平凡な恋愛をつづけたわけではなく、妻子ある男と付き合い、先がないと分かっていながらもづるづると関係を続けてしまう女など。人生経験が豊富な作者だからこそ描ける作品なのだろう。合理性だけでは説明できない行動の数々。相手を愛する気持ちが強いと、説明できない行動に出ることもあるのかもしれない。
■ストーリー
「誰かとつながりたい」という狂おしい衝動。自分の気持ちを見失って、そして男も失って、やりきれなさにムカつきながら、ジャストな自分を探そうとしている-そんな彼女たちの8つの物語。
■感想
「花嫁の男友達」は印象的だ。結婚式で花嫁の友人代表としてモテモテの友人がスピーチする。確かに花嫁の友人代表で男があいさつすると、それだけで周りは勘ぐってしまうだろう。花嫁の男に対する復讐という意味でスピーチを依頼したのだろうが…。
モテモテの男に対して自分は幸せになったと見せつけたいとしても…。そのスピーチの最後に男が自分も結婚しており、という言葉があり、それを聞いてショックを受ける花嫁。最後のこの流れは非常に複雑さを感じさせる展開だ。この花嫁の行動は合理的ではないが、気持ちは理解できる。
「海辺のピクニック」でひどい男の話を、付き合っている男に話し、その後の友達との会話を「海辺のピクニック、その後」でネタ晴らしをする。ひどい男の愚痴を、付き合っている男に話をする。ひどい扱いを受けたのは友達の話ということになっているが、実は自分のことだった。
妻子ある男と付き合っており、男に「結婚しよう」と言わることが救いになるらしい。どうなのだろう。その言葉を聞いて喜ぶタイプの人が、不倫をしているのが矛盾しているが、恋愛なんてのは矛盾に満ちているのが普通なのだろう。
「電話を待ちながら」は、知り合いになった男からの電話を待つなかで、いたずら電話の男のことが気になってしまう。顔も知らない相手ではあるが、継続して声を聴いているとなぜか親しみがわいてくる。今回は女が携帯を落としたことで、その中身を見られて自宅に電話をされたとの流れなのだが…。
実はいたずら電話は知り合いの男だった、というオチを期待したのだが、そうではない。自宅への電話というのが、今では違和感しかないのだが、当時としては普通なのかもしれない。
どう考えても矛盾に満ちているが、これこそが男女の恋愛なのだろう。