マルモイ ことばあつめ


 2023.9.1    母国語を守るという気概【マルモイ ことばあつめ】

                     
マルモイ ことばあつめ [ ユ・ヘジン ]
評価:3

■ヒトコト感想
韓国が日本に占領され、朝鮮語が滅びる恐れがある。母国語を守ろうとするジョンファンは、ひそかに朝鮮語の辞書を作ろうと画策しているのだが…。日本に占領された韓国内部では日本語教育がされ、名前も無理やり日本名に変えられたりもする。ろくな教育を受けず盗みや詐欺で生活していたパンスが偶然ジョンファンと知り合いとなり、そこからパンスは朝鮮語の辞書作成に協力することになる。

母国語を守るためにジョンファンたちの必死の活動がすさまじい。無学なパンスが辞書作りと同時に勉強するのが良い。実際に朝鮮語の辞書を作る際に、何人かの韓国人が死亡している。それだけ日本からの圧力などがあったのだろう。まるでキリスト教が弾圧されている際の隠れキリシタンのような活動だ。

■ストーリー
1940年代・京城(日本統治時代の韓国・ソウルの呼称)―盗みなどで生計をたてていたお調子者のパンス(ユ・へジン)は、ある日、息子の授業料を払うためにジョンファン(ユン・ゲサン)のバッグを盗む。ジョンファンは親日派の父親を持つ裕福な家庭の息子でしたが、彼は父に秘密で、失われていく朝鮮語(韓国語)を守るために朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言などあらゆることばを集めていました。

日本統治下の朝鮮半島では、自分たちの言語から日本語を話すことへ、名前すらも日本式となっていく時代だったのです。その一方で、パンスはそもそも学校に通ったことがなく、母国語である朝鮮語の読み方や書き方すら知らない。パンスは盗んだバッグをめぐってジョンファンと出会い、そしてジョンファンの辞書作りを通して、自分の話す母国の言葉の大切さを知り…。

■感想
日本に占領された韓国。国の内部では日本語がはびこり、小学生は日本語教育される。さらには名前までも日本式に変えられる。そんな状況で朝鮮語を守るために辞書を作ろうと奔走するのがジョンファンだった。本屋の裏に朝鮮語の辞書を作るための組織を作り上げ、ひそかに活動していた。

父親が親日派で裕福なジョンファンは、若社長として部下たちと協力するのだが…。朝鮮語への弾圧がすさまじい。この世から朝鮮語を無くすことを目的に日本からの強い圧力がかかる。すさまじい状況だ。

学がなく文字が読めないパンス。息子が優秀であり、学校で日本語教育を受ける。盗みや詐欺で生計を立てているパンスがジョンファンのカバンを盗んだことからふたりの交流が始まる。パンスは字が読めないが各地方出身の知り合いを集め、朝鮮語の辞書の方言集めを担当する。

日本軍からの弾圧を受けながら、仲間たちが投獄されたりもする。朝鮮語の辞書の原稿がまるで国家機密のような扱いとなる。警察たちは原稿を探し続け、ジョンファンたちは原稿を守るために必死となる。

原稿を守るためにパンスが犠牲となる。その前には大学教授が投獄され、獄死している。朝鮮語の辞書を作るために犠牲となった人がいたのは事実に基づいているのだろう。さらに衝撃なのは第二次世界大戦以降に占領された国で母国語を復活させた国は韓国以外にはないということだ。

グローバル化ということで、英語公用化を実施する企業はあるが、やはり母国語というのはその国のアイデンティティになるのだろう。それを必死に守り続けた誰かがいることが重要だ。

かなり強烈な作品だ。



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