護られなかった者たちへ


 2023.2.17     生活保護トラブルの実情【護られなかった者たちへ】

                     
護られなかった者たちへ [ 佐藤健 ]
評価:3

■ヒトコト感想
豪華な出演者が織りなす物語。生活保護を受けることができずに死んだ者たちの悲劇を描いた作品だ。序盤から東日本大震災の被害の悲惨さと、それにより困窮した者たちが描かれている。それから10年後。全身を縛られ餓死した連続殺人事件が発生する。被害者は生活保護の担当者だった。

一般的には生活保護の受付トラブルというのはよくあるという印象だ。生活保護を受けられなかったからと相手を恨みに思うのもよくあるパターンだ。担当者からしても、上から生活保護の申請を減らせと命令されているのだろう。本当に助けるべき人を助けられず、不正受給している人を見逃している現状もあるのだろう。真犯人は確かに意外な人物であることは間違いない。

■ストーリー
全身を縛られたまま "餓死" させられるという不可解な連続殺人事件が発生。捜査線上に浮かび上がったのは、過去に起こした事件で服役し、出所したばかりの利根という男。刑事の笘篠は利根を追い詰めていくが、決定的な確証がつかめないまま、第三の事件が起きようとしていた―。なぜ、このような無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?さまざまな想いが交錯する中、やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃の真実が明らかになっていく―

■感想
全身を縛られ餓死させられた死体。餓死は最も辛く苦しい死ではあるのだろう。激しい恨みでの行動と想像できる。物語は東日本大震災での困窮と、避難者の中でまるで家族のように仲良くなる者たちがでてくる。

孤独にさいなまれていた利根は幼い少女と老婆と知り合いとなる。いびつな状況ではあるが、老婆が困窮し生活保護を受けなければならない状況というのはよくわかる。そして、生活保護を申請したは良いが、身内に連絡されることを恐れ、申請を辞退する。このパターンは現実にどれくらいあるのだろうか。。

中盤まではおぼあさんが生活保護を受けられなかったことから餓死し、それを恨みに思った利根の犯行かと思われたのだが…。意外な人物が真犯人となる。根本にあるのは、役所側は生活保護を申請されたくない、というのがある。

なんだかんだと優しい語り口で話をするが、根本は自分でなんとかしろ、というのがにじみでている。担当者やその上司はどれだけ生活保護の申請を絞れるかが評価になるのだろう。不正受給を取り締まるのは必要だが、本当に必要な人にいきわたらないのは問題だ。

ミステリーの要素は確かにある。主役の刑事として阿部寛が演じているので、どこか東野圭吾のドラマシリーズのような印象がある。登場人物の誰もが震災で身内に被害がでた状況となる。本来なら悪人である役所の担当者にしても同情すべき要素はある。

震災での多忙と、生き別れた娘に連絡がいくことを拒否し生活保護の申請をしなかったおばあちゃん。皆に理由がある。おばあちゃんの復讐のために行動する者にしても、自らが同じような過ちを犯している。

非常に複雑な物語だ。



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