キュア 


 2024.11.22      ガンを切除し続けた医者がガン患者となる 【キュア】


                     
キュア / 田口ランディ
評価:2.5
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■ヒトコト感想
若い外科医が自分がガンであることを知りスピリチュアルな世界に入り込んでいく物語だ。冒頭でこの外科医が少年のころに普通ではない能力をもっていると描写がされていた。そこから優秀な外科医となりガン患者の身体からガンを切り取っている。リストカットの少女キョウコと知り合いとなり、様々な人々との出会いと自分がガンになったことにより大きな変化が起きる。

序盤の医者と患者の関係は興味深い雰囲気であるのは間違いない。ただ、後半はスピリチュアルな世界が全開となり、作者の得意な領域になっている。末期がんの患者の中には、生きるために執念を燃やす者もいれば、体にメスを入れずに生き延びることを選ぶ者もいる。様々なガン患者の状況が描かれている。

■ストーリー
若き外科医は肝臓がんで余命1年であることを知る。リストカットの少女に支えられ、同僚の医師や看護師、がん患者のカリスマ、放射線生物学者との出会いのなかで、病気とは何かを問い、自らのキュア・治療を模索する。待望の力作長編小説。

■感想
外科医としてガン患者のガンを切り取り続ける斐川。上司の医師の命令で患者のガンを切り続けるのだが、斐川は様々なガン患者に出会う。ガンを切ったは良いが、別の場所に転移しており助かる見込みがない。

そんな患者に対して、緩和ケアをおすすめするのだが、生きるための執念がすさまじくガンに負けたくない患者がいた。医者をひたすら困らせる患者の執念はすさまじい。抗がん剤だけでなくガンを切除してガンと闘い続けたい。方や、まだ助かる可能性があるが、ガンを全く切ることなく自然に生活することを選択する患者もいる。

斐川は自らがガン患者となり、体中にガンが転移していることを知る。それを知った瞬間、周りの医者の勧めを無視して精密検査を受けることを拒否する。それまで患者のガンを切り続けた男が、自分がガンになると精密検査から逃げ続ける。

これは矛盾しているが、ガン患者に接してきた医者だからこそ選ぶ選択肢なのかもしれない。自分がガンに侵されていることを知りながら現実から逃げている。結局、後半からは斐川の人生観を変える様々な出会いがある。

山伏やガンを克服したサバイバーと出会ったりもする。斐川自身には他人を治す特殊な能力があるが、自分のガンを治すことはできない。ガンに対しては何が正解なのかはわからない。身近な人に対して自分はガンだと告げるのは辛いことだろう。

どこかで達観するかもしれないが、それまでは果てしない苦しみがあるのだろう。悟りを開いたようになれればよいのだが…。玄米と少しの水だけの生活をすればよいだとか、漢方を飲めばよいだとか。。。結局は何かにすがるしかないのだろう。

後半はいつものスピリチュアルな世界全開だ。



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