今日の空の色 


 2024.4.15      鎌倉暮らしの日常エッセイ 【今日の空の色】


                     
今日の空の色 (幻冬舎文庫) [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
小川糸の日常エッセイ。いつにもまして日記的な印象が強い。鎌倉に小さな古い家を借りてペンギンとは別居状態となる。仲が悪くてそうなったのではなく、単純にペンギンは東京で仕事があったかららしい。鎌倉の家はスマホもテレビもない。デジタルデトックスな状態。ご近所さんと仲良くしながら、鎌倉での日々を過ごす。エッセイの中には作者のプライベートな部分に踏み込んだエッセイもある。

不妊治療に挑んでいただとかは、今までのエッセイにはない内容だ。深刻に陥りがちな話題ではある。他エッセイでは仲の良い姪っ子の話が頻繁に登場するなど、それなりに意識していたというのは間違いない。のんびりとした日常を描いたエッセイではあるが、たまにスパイスがある。

■ストーリー
鎌倉に小さな古い家を借りて、久し振りの一人暮らし。朝は早起きしてお寺の座禅会に参加し、夜は屋上でビール片手に満天の星を観る。ペンギンと恋人のように待ち合わせして夕食を楽しんだり、近くの小川をホタルと一緒にお散歩したり。携帯もテレビもない不便な暮らしを楽しみながら、本当に大切なことに気付く日々を綴った大人気日記エッセイ。

■感想
携帯電話もテレビもない暮らしとはどんなものなのだろう。場所が鎌倉ということもあり、のんびりと野山に囲まれ、落ち着いた雰囲気をイメージさせる。ただ、鎌倉でも観光地に近いあたりになると人がごった返しているので終始落ち着いた雰囲気というわけではないだろう。

早起きしてお寺の座禅会に参加する。近所の人たちと顔見知りになり、散歩をしたりと日々をのんびり楽しむ。たまに夫であるペンギンが東京からやってくると、待ち合わせをしてデートのような雰囲気となる。

夫婦のふたりの生活なので、維持できる雰囲気なのだろう。他のエッセイからも、姪っ子が遊びにくるというのは頻繁に描かれていたが、子供がいないというのは事実としてわかっていた。本作では不妊治療についてのエッセイもある。

不妊治療が非常に大変で、経済的にも精神的にも大きな負担になるということが描かれている。結果として治療は成功しなかった。ただ、それについて悲壮感漂う描かれ方はしていない。世の中にどれだけ子供を授かることを望んでいる人がいるのか。それが作者のエッセイから伝わってきた。

様々な作品を生み出している作者。ちょうど出版時期に重なるエッセイもある。自分が丹精込めて作り上げた作品が出版されるのはどんな気分なのだろう。なんとなくだが、エッセイから感じるのはそこまで売れることに心血を注いでいるような感じではない。

ドラマ化を狙うだとか、大ヒットしてウハウハな印税生活だとか、セレブな生活とは真逆な生活を好む作者なので、ガツガツした部分はない。もし自分が定年退職したら田舎に移り住んでのんびりと暮らしたい、なんて思っている人は読んでみるとよいだろう。

鎌倉暮らしの日常エッセイだ。



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