空母いぶき


 2023.12.28    日本人らしい我慢の映画だ【空母いぶき】

                     
空母いぶき [ 西島秀俊 ]
評価:3

■ヒトコト感想
どうやらマンガ原作らしい。マンガは未読。国籍不明の武装集団に初島を占拠され、そこには海保の者たちがいた。日本の領土を奪還するために偶然、訓練航海中であった空母いぶきが現場に向かうことになる。未確認の敵に対して、日本は攻撃を加えることはできない。専守防衛を貫くために現場の自衛官たちは苦労する。

非常にもどかしいが、これが日本の現実なのだろう。敵の艦隊に攻撃されたとしても、安易に攻撃を返すことはできない。そればかりか、敵の戦闘機を撃墜したとしても、敵パイロットを死なせないことを考えなければならない。それが破られると日本は戦争に突入してしまうから…。政治家の事なかれ主義に見えてしまう。その一番の影響は間違いなく現場で戦っている自衛官たちだ。

■ストーリー
20XX年、12月23日未明。未曾有の事態が日本を襲う。沖ノ鳥島の西方450キロ、波留間群島初島に国籍不明の武装集団が上陸、わが国の領土が占領されたのだ。海上自衛隊は直ちに小笠原諸島沖で訓練航海中の第5護衛隊群に出動を命じた。その旗艦こそ、自衛隊初の航空機搭載型護衛艦《いぶき》だった。計画段階から「専守防衛」論議の的となり国論を二分してきた《いぶき》。艦長は、航空自衛隊出身の秋津竜太一佐。

そしてそれを補佐するのは海上自衛隊生え抜きの副長・新波歳也二佐。現場海域へと向かう彼らを待ち受けていたのは、敵潜水艦からの突然のミサイル攻撃だった。さらに針路上には敵の空母艦隊までもが姿を現す。想定を越えた戦闘状態に突入していく第5護衛隊群。政府はついに「防衛出動」を発令する。迫り来る敵戦闘機に向け、ついに迎撃ミサイルは放たれた……。

■感想
国籍不明の敵艦隊が向かってきた。戦闘機が出動しこちらの偵察機が撃たれてしまう。この時点でも、まだ空母いぶき側からは攻撃できない。敵がミサイル攻撃をしてきたとしても、ミサイルを撃墜することしかできない。魚雷であっても同様だ。

政府がついに防衛出動を発令したとしても、それは好き勝手に攻撃ができるということではない。何かと制限のある自衛官の苦悩が伝わってくる。日本を戦争に導かないために、相手から攻撃されたとしても、ひたすら耐えるしかない。これは辛すぎる。

現場で戦う自衛官はどのような気持ちでいるのだろうか。相手に攻撃されれば死ぬ可能性もある。にもかかわらず、こちらから攻撃することはできない。戦闘機での戦いのシーンでは、攻撃を受けた戦闘機が撃墜されたのだが、パイロットは無事に脱出することができた…。

やる気になれば、相手の艦隊を殲滅することができるのだが、決してしない。相手の国に戦争の口実を与えないため、というのはあるのだが…。アメリカでは絶対に作られないパターンの映画だ。日本だからこそ成立する、日本人らしい我慢の映画だ。

もし自分が現場で戦う自衛官だったら、、。間違いなく攻撃するだろう。やらなければやられる状態で、敵ばかりが好き勝手攻撃し、こちらは攻撃できないなんて理不尽なことはない。政治家たちは安全な場所から責任を回避するために決断できずにいる。

ただ、それが最終的には日本の戦争への突入を防いだという流れとなってはいるのだが…。ハリウッド映画であれば、仲間が死んだら間違いなく徹底的に反撃し、それまでのカタルシスの解放へとつなげていくのだろう。

映像はリアルですばらしいが、もどかしい作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp