クロエとエンゾー / 辻仁成
評価:2.5
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■ヒトコト感想
序盤では謎のアルバイトを持ち掛けられるエンゾーのパートと、作家の春雨が若い男から言い寄られる物語が描かれている。見ず知らずの美しい女性を抱くことが仕事のアルバイトを行うエンゾー。その相手はクロエだった。エンゾーにバイトを持ち掛けた男とクロエの関係の不思議さがメインだ。
その後、春雨へ言い寄る男はエンゾーだということがわかる。時間軸の変化を感じながら、中盤になると春雨、クロエ、エンゾーの関係が明らかとなる。ここまでは割とシンプルでよいのだが…。その後、クロエの書いた小説のパートからは、なんだかよくわからなくなる。後半ではクロエとエンゾーの関係も不思議なものとなり、劇中劇のように小説が物語の邪魔をしているように感じられた。
■ストーリー
エンゾーは見ず知らずの男から女性と関係を持って欲しいとアルバイトを持ちかけられる。その女性がクロエ。作家の春雨は三十以上も年の離れた男性から執拗に関係を迫られる。その男性がエンゾー。第二部はクロエが書いた物語に転換し、第三部はエーゲ海を舞台にクロエのその後、そして同名のエンゾーという老作家の物語にクロエとエンゾーが予知されていることに気付く。
■感想
エンゾーは怪しげなバイトを持ち掛けられる。ある女性を抱いてほしいと。そこには美しい女性がおり、依頼した男は傍らで見ている。あまりにへんてこなシチュエーションだが、エンゾーは受け入れ、その結果クロエに恋をしてしまう。
非日常的なバイトから恋愛にすすむ。エンゾーの強引なアプローチはクロエを困惑させる。男の目的がわからないままクロエとエンゾーのバイトは2回目を迎えるのだが…。ここで男とクロエが血のつながらない親子であり、恋人であると気づく。あまりに複雑すぎる関係だ。
春雨のパートは、謎の若い男に言い寄られる年寄りの春雨の困惑が描かれている。のちにその男はエンゾーだということがわかり、最終的には春雨はクロエの実の母親であるとわかる。かなり複雑な関係だ。
時間軸的にはクロエのバイトが2回目で終わり、その後、クロエを探すためにエンゾーは春雨に近づいたのだった。春雨があまりにかわいそうすぎる。実の娘の消息を知るためにエンゾーは春雨に近づいた。純粋な恋愛としてエンゾーが自分に近づいてきたのだと勘違いしていたのは悲しすぎる。
後半ではクロエの小説が劇中劇形式で登場してくるのだが…。このあたりからよくわからなくなってくる。テロリストだとか自殺だとかなんだとか。小説としての不思議さと現実の物語がごっちゃになっている。クロエと春雨とエンゾーの関係はドロドロしている。
クロエと春雨は実の母娘ではあるが、お互いがライバル関係としてバチバチしている。そもそもが、春雨の再婚相手の男とクロエが恋愛関係になることが大問題なのだが…。後半は良くわからない展開だ。
前半の物語がシンプルでよかった。