くもをさがす 


 2023.11.6      カナダで乳がん治療をするノンフィクション 【くもをさがす】

                     
くもをさがす [ 西加奈子 ]
評価:3
西加奈子おすすめランキング
■ヒトコト感想
西加奈子が乳がんを宣告され、治療を終えるまでを描いた作品。カナダでの闘病記録がメインなのだが、海外での癌治療が相当大変だというのがよくわかる作品だ。癌の治療はただでさえ大変だ。抗がん剤や手術、予定外に体調不良になった場合にどうするか。言葉が自由に通じない環境であり、さらにはコロナ渦でのことなのでなおさら大変だ。

カナダの病院の仕組みや民間サービスが日本と異なることなど、日本との違いがこれでもかと描かれている。最も印象的なのは、患者が自ら行動したとしても、病院側はかなりおっとりとしており、平気で数時間待たされることが当たり前のようだ。自分であれば不安なので日本で治療したいと思うだろう。

■ストーリー
『くもをさがす』は、2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。

■感想
コロナ渦の最中に乳がんを宣告されカナダで癌の治療をする。様々な要素が詰まりすぎている。日本であってもコロナ渦での癌の手術は大変だと言われていた。それを海外で行うのは様々な障害があることだろう。癌を宣告され、そこから治療に至るまでにはカナダの医療の仕組みが日本と違うというのがある。

まずはホームドクターの診察を受けてから専門医を紹介されるらしい。外国人であればそのホームドクターがいない状態なので様々な不便がある。さらには、作者には小さな子供もいるということでかなり困難な状況だ。

癌の手術もコロナ渦であれば様々な制約がある。それらをクリアし手術し癌を切除したとしても…。感覚的には手術よりも手術後の抗がん剤治療の方が大変なように感じられた。乳がんというのもあり、乳房を切除することや乳首をどうするのかなど切実な問題がある。

それらを作者がどんな選択をしたのかが赤裸々に語られている。抗がん剤の副作用は人によって大きく違うのだろうが、コロナ渦というのはかなり強烈なインパクトとなる。免疫力が下がった状態では、コロナに感染し重症化する可能性が大きいのだろう。

家族や友人たちの協力があり作者は乳がんを克服している。作者の作品からは死の恐怖については描かれていない。まったく死の恐怖がないわけではないのだが、それよりも常に前向きで、未来のことを考えて行動しているのが印象的だ。カナダのお国柄なのか、日本と違いワークライフバランスを重視しているのがよくわかる。

ただ、それはサービスの質が下がることも意味している。その不便さを受け入れることができればカナダで緩く生活するのもよいのだろう。

癌の治療をカナダで行うのは怖いと感じた。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp