幸福な結末 


 2023.12.16      角膜移植後に見る幻の男 【幸福な結末】

                     
幸福な結末 / 辻 仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
目が見えないヴァレリーは角膜移植で光を取り戻した。そこからヴァレリーは男の幻を見るようになる。ヴァラリーが幻で見るのは、ヴァレリーに角膜を移植した女性の網膜に焼き付いていた男だと想像するヴァレリー。男に会いにいくための物語となっている。

心臓移植や角膜移植など、移植された側が、移植した側の性格や視線を引き継ぐパターンの物語は多数ある。本作もその流れであり、幻の男を探すためにヴァレリーは動き出す。まずは角膜移植をしてくれた人物を探しだし、そこから日本に住む謎の男ナツキを探し出そうとする。ヴァレリーがそもそもフランスでは不倫関係にあり、その男とのごたごたから逃げ出すというのもあるのかもしれない。ちょっとしたロードムービー的な流れだ。

■ストーリー
角膜移植で光を取り戻したヴァレリーは、手術後、不思議な男性の幻を見るようになる。いつも悲しそうな顔をして、ひっそりとたたずむアジア系の男性。この角膜が、かつて見つめていた人物なのだろうか―?しかも焼き付くほどに。彼を突き止め、どうしても会いに行かなければ。ブリュッセルの女と東京の男が運命によって呼び合わされたとき、新たな人生が始まり、明日への希望と祈りに包まれる。幸せの予感に満ちあふれた、極上の愛の物語。

■感想
角膜移植手術を受けてヴァレリーは光を取り戻す。その日から男の幻を見るようになる。フランスで既婚者の男と不倫関係にあるヴァレリー。その関係をどうするのかはさておき、相手の男が奥さんと離婚しヴァレリーと結婚しようと迫ってきたことで、ヴァレリーの気持ちが覚めていく。

相手が真剣になると、急激に覚めるというのはよくあるパターンだ。ヴァレリーが気になるのは網膜に焼き付いている謎の男の存在だ。ヴァレリーに角膜を提供してくれた若い女性についての情報を得ることに成功し、そこから謎の男の存在に近づくことができる。

ヴァレリーは謎の男ガナツキという名前であることがわかり、ナツキに会うために日本にやってくる。ヴァレリーに角膜を提供したフランス女性はナツキと付き合っていた。それは予想できることだが、ナツキと出会い、ふたりの関係の真相を知る。ナツキの正体がよくわからないのが印象的だ。

ナツキが過去の恋人との写真をヴァレリーに見せる。大量にある写真を見ることで、ヴァレリーは角膜を提供された女性のことを知るのだが…。ナツキが写真家というのがポイントなのかもしれない。

ナツキの恋人は自殺していた。最後に目に映ったのがナツキの姿で、それをヴァレリーは見ていた。衝撃的な事実が判明し、ヴァレリーはフランスに帰ることになる。結局はヴァレリーはナツキと恋人関係になる。フランスから日本へ向かう際に不倫相手から、日本の男に抱かれるのだろう?と言われたことがそのまま当てはまった。

不倫相手とうまくいかず、遂には別れることを決断したのだが、そのこともナツキと付き合うことの後押しになったのだろう。

ナツキを探すロードムービー的な展開だ。



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