首切り島の一夜 


 2023.4.9      ミステリー風でミステリーではない 【首切り島の一夜】

                     
首切り島の一夜 [ 歌野晶午 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
壮年の男女と元教師が同窓会企画の修学旅行に参加する。そこで、旅行参加者のひとりである久我が離島で首を切られ殺されていた。悪天候で島の外にでることもできずにある意味密室に近い状態となる。そこからがっつりとしたミステリーと謎解きがスタートするのかと思いきや…。参加者それぞれが、回想をする。

登場人物それぞれの人生があり、悪天候で島から出られないことで、小学生の息子が警察に保護された状態であるにも関わらず島から出らずに困惑する女性。警察は殺人事件の参考人として島からそう簡単に出すわけにはいかない。真犯人が誰かという流れよりも、登場人物たちの複雑な人生を楽しむべき作品だろう。かなり特殊なミステリーだ。

■ストーリー
壮年の男女と元教師が四十年ぶりに修学旅行を再現した同窓会を企画する。行き先は濤海灘に浮かぶ弥陀華島、別名星見島とも言われる離島。宴席で久我陽一郎は、当時自分たちの高校をモデルにミステリを書いていたと告白する。その夜、宿泊先で久我の死体が発見される。折悪しく荒天のため、船が運航できず、天候が回復するまで捜査員は来られない。宿にとどまった七人は、一夜それぞれの思いにふける……。彼ら一人ひとりが隠している真実は、事件の全容をあきらかにするのか──。

■感想
同窓会で話が盛り上がり、修学旅行を再現する。行き先の離島に行ったは良いが、宿泊先で久我が死体となって発見される。事件は修学旅行参加者の中に犯人がいるという流れとなる。誰かが久我に恨みをもち、そのために久我を殺害した。

という流れなのだろう。修学旅行の参加者ひとりひとりの過去が語られる。その中で久我との付き合いで事件の真相が明らかとなるかと思いきや…。メインはそれぞれの人生を読ませることなのだろう。一筋縄ではいかない人生の数々が続いていく。

どの人物の人生も明るく楽しいものではない。子供に障害があり、高齢で産んだ子供だからと、同級生から子供がバカにされたりもする。そして、旅行中に子供が同級生を刺し警察に保護されることになる。強烈に陰鬱な出来事が続く。

早く息子の元に帰りたいが、嵐により船が欠航し島から出れない。さらには殺人事件の参考人として調べられるため、天気が回復してもなかなか島から出ることはできない。修学旅行参加者の全員に何かしら問題があり、それが殺人事件に繋がるかと思いきや…。

元教師のエピソードが印象深い。教え子のひとりがビートルズ研究部を作りたいということで、様々な活動をする。教師として駆け出しの男が戸惑いつつも、生徒に協力し部の立ち上げに成功するのだが…。本作で表現したかったことは、どの登場人物も殺人事件には無関係かもしれないが、熟年にもなると何かしら問題はあるということを言いたかったのだろうか。

平穏無事な人生などない。誰しも人生の中で暗部となるものがあるということなのだろう。

ミステリーではない。



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