コリーニ事件


 2022.9.15     ドイツの戦争犯罪者をどう扱うのか【コリーニ事件】

                     
コリーニ事件 [ エリアス・ムバレク ]
評価:3

■ヒトコト感想
弁護士のライネンがある殺人事件の容疑者を弁護することになる。ドイツという国だからこそ成立する物語だろう。被害者はライネンが幼いころから世話になっていた父親代わりの恩人だった。すばらしい人格で裕福な恩人の死。普通なら、そんな恩人を殺害した加害者の弁護など引き受けるはずがないのだが…。

加害者が多くを語らずその動機が不明のままライネンが調査する。後半になると加害者がなぜライネンの恩人を殺害したかの真相が明らかとなる。戦争中の悲惨な出来事。そして、戦争が終わった後も、その罪が裁かれることはない。かといって殺人という行為が許されることではないのだが、作中の論調ではそれもやむを得ないというほど戦争犯罪のすさまじさにインパクトがある。

■ストーリー
新米弁護士ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人に任命される。だが被害者は少年時代からの恩人だった。動機について一切口を閉ざす被告人だったが、事件を調べるうちに戦後の歴史、ドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展ーー。国民誰もが知りたくなかった真実に向き合うことになる。

■感想
ライネンの生い立ちが語られることになる。小さいころから実の子どもと同様に育てられ、裕福な家庭でまるで養子のような存在となっていた。ある意味、ライネンの父親と言っても良い存在の男が殺された。その加害者の弁護をすることになったライネンなのだが…。

序盤では厳しいながらも、自由に育ててくれた恩人に対してのライネンの思いが描かれている。同い年の男の子や少し年上のお姉さんと一緒に暮らし、勉強をしたことでライネンは弁護士になれたのだろう。ドイツの物語で、ライネンがトルコ系というのもポイントなのだろう。

加害者を弁護するということで、周りから非難される。当然だろう。自分の父親といっても過言ではない人を殺した人物を弁護するのだから。それでもライネンは弁護士としての仕事を全うしようとする。ここからなぜ加害者が殺害に至ったのかを調査することになる。

まったく無関係と思われたふたりなのだが実は過去に繋がりがあった。ライネンの恩人は戦争中にドイツの将校として悲惨な戦争犯罪を起こしていた。子供である加害者の目の前で父親を銃殺するという凄惨な出来事が語られている。

ドイツというお国柄なのだろう。過去の戦争犯罪はしっかりと裁かれるべきだが、ある時期の法改正により裁かれるべき人物が無罪となっていた。その恩恵を恩人は受けていた。たとえ自分の恩人の名誉を粉砕することになろうとも、真実を明らかにしようとするライネン。

戦争犯罪者でありながら罪を逃れた人物は、その後、殺害されてもしょうがないという流れなのだろうか。加害者は少年時代の恨みの思いをすべてぶつけたのだろう。

日本ではこうはならないだろう。



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